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作成日:2026/07/09
最低賃金改定の議論がスタート

最近の労務ニュースとして、注目していただきたいのが、最低賃金改定に向けた議論です。

 

厚生労働省の中央最低賃金審議会では、2026年6月26日に令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安について諮問が行われました。

 

また、同日には目安に関する小委員会も開かれ、今年度の最低賃金改定に向けた議論が始まっています。

 

現時点では、令和8年度の具体的な引上げ額はまだ決まっていません。

 

しかし、ここ数年は最低賃金の引上げが続いており、中小企業にとっても「
決まってから対応する」では間に合わないテーマになっています。

 

最低賃金は、パート・アルバイトだけの話ではありません。

 

月給者、日給者、出来高払いの従業員についても、時間あたりの賃金に
換算して最低賃金を下回っていないか確認する必要があります。

 

今回は、最近の最低賃金改定に向けた動きを踏まえ、中小企業が秋を待たずに
確認しておきたいポイントを解説します。

 

 

最低賃金とは何か

 

最低賃金とは、会社が従業員に支払わなければならない賃金の最低額を定めたものです。

 

都道府県ごとに定められる地域別最低賃金があり、会社はその金額以上の賃金を支払う必要があります。

 

対象となるのは、正社員だけではありません。

 

パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員など、雇用形態に関係なく適用されます。

 

たとえば、「学生アルバイトだから」「短時間勤務だから」「試用期間中だから」という理由で、最低賃金を下回ることはできません。

 

最低賃金を下回る賃金で契約していた場合でも、その部分は法律上無効となり、最低賃金額との差額を支払う必要があります。

 

中小企業では、昔からの給与設定をそのまま使っているケースもあります。

 

最低賃金が上がる時期には、必ず自社の賃金が基準を満たしているか確認することが重要です。

 

 

令和8年度の最低賃金改定に向けた議論が始まっています

 

令和8年度の地域別最低賃金額改定に向けて、中央最低賃金審議会で議論が始まりました。

 

例年、夏ごろに国の審議会で引上げ額の目安が示され、その後、各都道府県の地方最低賃金審議会で地域ごとの金額が審議されます。

 

最終的には、都道府県ごとに新しい最低賃金額と発効日が決まります。

 

多くの地域では秋ごろから新しい最低賃金が適用されますが、発効日は都道府県によって異なります。

 

そのため、「全国一律で同じ日から変わる」と考えないことが大切です。

 

特に複数の都道府県に店舗や事業所がある会社では、それぞれの地域の最低賃金額と発効日を確認する必要があります。

 

 

令和7年度は全国加重平均1,121円に

 

参考として、令和7年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,121円となりました。

 

前年度から66円の引上げです。

 

また、令和7年度には、すべての都道府県で地域別最低賃金が1,000円を超えました。

 

これは、中小企業の賃金管理にとって大きな変化です。

 

これまで「時給1,000円なら大丈夫」と考えていた会社でも、地域によってはすでに最低賃金を下回っている可能性があります。

 

特に、パート・アルバイトを多く雇用している会社や、最低賃金に近い賃金で採用している会社は注意が必要です。

 

また、時給者だけでなく、月給者についても確認が必要です。

 

月給を時間単価に直してみると、最低賃金に近い水準になっていることがあります。

 

 

中小企業がまず確認すべき賃金チェック

 

最低賃金改定に向けて、中小企業がまず行うべきことは、自社の賃金を確認することです。

 

確認したいのは、次のような従業員です。

 

パート・アルバイト。

 

試用期間中の社員。

 

短時間正社員。

 

契約社員。

 

嘱託社員。

 

月給が低めに設定されている若手社員。

 

固定残業代を含む給与体系の社員。

 

特に注意が必要なのは、月給者です。

 

月給制の場合、単純に月給額だけを見ても最低賃金を満たしているかは判断できません。

 

月給を所定労働時間で割り、時間あたりの賃金に換算して確認する必要があります。

 

また、通勤手当、家族手当、賞与、時間外割増賃金などは、最低賃金の計算に含めないものがあります。

 

「総支給額では最低賃金を超えているから大丈夫」と考えるのは危険です。

 

 

固定残業代がある会社は特に注意

 

中小企業でよく見られるのが、固定残業代を含めた給与体系です。

 

たとえば、「月給25万円。うち固定残業代〇時間分を含む」という形です。

 

この場合、最低賃金を確認するときには、基本給部分と固定残業代部分を分けて考える必要があります。

 

固定残業代を除いた賃金部分が、最低賃金を下回っていないか確認することが大切です。

 

固定残業代の設計があいまいな会社では、最低賃金だけでなく、残業代トラブルにつながることもあります。

 

最低賃金改定のタイミングは、給与明細や雇用契約書の内容を見直す良い機会です。

 

 

最低賃金ぎりぎりの採用は人材確保にも影響する

 

最低賃金の引上げは、単なる法令対応だけの問題ではありません。

 

採用にも大きく関わります。

 

近隣の会社が時給を上げている中で、自社だけが最低賃金ぎりぎりのままだと、応募が集まりにくくなる可能性があります。

 

また、既存社員から見ても、「新しく入る人の時給は上がるのに、自分の給与は変わらない」という不満が出ることがあります。

 

最低賃金が上がると、賃金表全体のバランスが崩れることがあります。

 

たとえば、長く勤めている社員と新人の時給差がほとんどなくなるケースです。

 

これは、現場のモチベーション低下につながることがあります。

 

最低賃金改定への対応では、「最低賃金を下回らないか」だけでなく、「社内の賃金バランスが崩れていないか」も確認することが大切です。

 

 

価格転嫁や業務改善もあわせて考える

 

最低賃金が上がると、人件費の負担は増えます。

 

中小企業の事業主にとっては、非常に悩ましい問題です。

 

しかし、人件費の上昇をすべて会社の努力だけで吸収しようとすると、経営を圧迫してしまいます。

 

そのため、価格設定や業務の進め方もあわせて見直す必要があります。

 

たとえば、

 

値上げや価格転嫁を検討する。

 

利益率の低い業務を見直す。

 

手作業を減らし、システム化できる部分を探す。

 

シフトの組み方を見直す。

 

残業時間を減らす。

 

教育体制を整え、早く戦力化できる仕組みを作る。

 

こうした取り組みが、賃上げ原資の確保につながります。

 

最低賃金改定は、単に給与を上げる話ではありません。

 

会社の利益構造や働き方を見直すきっかけにもなります。

 

 

助成金や支援策の活用も検討する

 

賃上げに取り組む中小企業向けには、国の助成金や支援策が用意されている場合があります。

 

たとえば、設備投資や業務改善を行いながら賃金を引き上げる場合に活用できる制度があります。

 

ただし、助成金は要件が細かく、申請前に計画が必要なものもあります。

 

「賃上げした後に使えると思っていたが、要件に合わなかった」ということもあります。

 

そのため、助成金を検討する場合は、早めに最新情報を確認することが大切です。

 

制度は年度によって変更されることがあるため、過去の情報だけで判断しないようにしましょう。

 

 

秋を待たずに準備したい理由

 

最低賃金は、毎年秋ごろに改定されることが多いですが、実務対応はその前から始める必要があります。

 

新しい最低賃金額が発表されてから慌てて確認すると、給与計算や雇用契約の見直しが間に合わないことがあります。

 

特に、次のような会社は早めの準備が必要です。

 

パート・アルバイトが多い会社。

 

最低賃金に近い時給で雇用している会社。

 

複数の都道府県に事業所がある会社。

 

固定残業代を導入している会社。

 

月給者の給与水準が低めの会社。

 

採用時給を見直していない会社。

 

事前に対象者を洗い出しておけば、改定額が決まった後の対応がスムーズになります。

 

また、賃金改定に伴って雇用契約書や労働条件通知書の見直しが必要になる場合もあります。

 

 

中小企業が今確認したいチェックポイント

 

最低賃金改定に向けて、今のうちに確認しておきたいポイントを整理します。

 

現在の地域別最低賃金を確認しているか。

 

自社の時給者が最低賃金を下回っていないか。

 

月給者を時間単価に換算して確認しているか。

 

固定残業代を除いた賃金部分を確認しているか。

 

試用期間中の賃金も確認しているか。

 

パート・アルバイトの契約書を見直しているか。

 

発効日が都道府県ごとに違うことを把握しているか。

 

複数事業所がある場合、地域ごとに確認しているか。

 

最低賃金引上げ後の人件費を試算しているか。

 

社内の賃金バランスが崩れないか確認しているか。

 

採用時給を見直す必要がないか検討しているか。

 

助成金や支援策の活用可能性を確認しているか。

 

すべてを一度に完璧に行う必要はありません。

 

まずは、最低賃金に近い従業員を洗い出すことから始めるとよいでしょう。

 

 

まとめ:最低賃金対応は「決まってから」ではなく「今から」

 

令和8年度の最低賃金改定に向けた議論が始まっています。

 

具体的な引上げ額はこれから示される予定ですが、ここ数年の流れを見ると、中小企業にとって賃金管理の重要性はますます高まっています。

 

最低賃金対応で大切なのは、単に時給を上げることだけではありません。

 

月給者を含めた賃金チェック。

 

固定残業代の確認。

 

雇用契約書の見直し。

 

社内の賃金バランスの確認。

 

人件費増加への対応。

 

採用力や定着率への影響。

 

こうした点をまとめて考える必要があります。

 

最低賃金は、法令遵守の問題であると同時に、人材確保や経営計画にも関わるテーマです。

 

「発表されてから考える」のではなく、今のうちから自社の賃金水準を確認し、必要な見直しを進めておきましょう。

 

中小企業にとって、賃上げは簡単な課題ではありません。

 

だからこそ、早めに現状を把握し、価格転嫁、業務改善、助成金の活用も含めて、自社に合った対応を考えていくことが大切です。

 

出典:

厚生労働省「中央最低賃金審議会」

厚生労働省「中央最低賃金審議会 目安に関する小委員会」

厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

厚生労働省「全都道府県で地域別最低賃金の引上げが答申!賃上げ支援策を紹介します」