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作成日:2026/07/28
育児・介護休業法改正に対応できていますか?中小企業が見直したい職場ルール

育児や介護と仕事の両立は、今では一部の社員だけの問題ではなくなっています。

 

子育てをしながら働く社員。

親の介護が始まりそうな社員。

まだ表には出していないけれど、家庭の事情を抱えながら働いている社員。

 

中小企業でも、こうしたケースは決して珍しくありません。

 

最近の労務ニュースとして押さえておきたいのが、育児・介護休業法の改正です。

 

特に2025年10月1日からは、3歳から小学校就学前の子を育てる社員について、会社が柔軟な働き方の制度を複数用意することが求められるようになっています。

 

「うちは人数が少ないから大企業のような制度は難しい」

「制度はあるけれど、実際に使われると現場が回らない」

「パートさんや短時間勤務の社員にも関係あるのか分からない」

 

このように感じる事業主の方も多いと思います。

 

ただ、育児・介護休業法への対応は、単に法律を守るためだけの話ではありません。

 

社員が家庭の事情で辞めざるを得なくなる前に、会社としてどこまで働き続けられる道を用意できるか。

 

この視点が、これからの中小企業の人材定着に大きく関わってきます。

 

 

【育児・介護休業法改正で何が変わったのか】

 

今回の改正では、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための制度が強化されています。

 

特に中小企業が押さえておきたいのは、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者への対応です。

 

2025年10月1日から、事業主は次の5つの選択肢の中から、2つ以上の措置を選んで制度として設ける必要があります。

 

始業時刻等の変更。

 

テレワーク等。

 

保育施設の設置運営等。

 

養育両立支援休暇の付与。

 

短時間勤務制度。

 

そして、会社が選んだ制度について、対象となる社員へ個別に周知し、利用する意向を確認することも必要です。

 

ここで大切なのは、「制度を就業規則に書いて終わり」ではないという点です。

 

実際に対象となる社員に対して、どの制度があるのか、どこへ申し出ればよいのかを伝える必要があります。

 

また、社員本人がどのような働き方を希望しているのかも確認することになります。

 

 

【中小企業こそ早めの確認が必要】

 

育児・介護休業法の改正というと、「大企業向けの話ではないか」と感じる方もいるかもしれません。

 

しかし、中小企業こそ早めに確認しておく必要があります。

 

なぜなら、中小企業では一人の社員が抜けたときの影響が大きいからです。

 

子どもの送迎で早く帰りたい。

保育園の行事で休みたい。

小学校入学前までは勤務時間を少し調整したい。

親の介護が始まり、急な休みが必要になるかもしれない。

 

こうした相談があったとき、会社にルールがないと、その場その場の判断になってしまいます。

 

ある社員には認めたのに、別の社員には認めなかった。

 

社長は認めたつもりでも、現場の上司が困ってしまった。

 

制度はあるけれど、誰も内容を知らなかった。

 

こうした状態になると、不公平感や職場の混乱につながります。

 

中小企業では柔軟な対応がしやすい反面、ルールがあいまいになりやすい面もあります。

 

だからこそ、最低限の職場ルールを整えておくことが大切です。

 

 

【柔軟な働き方は何を選べばよいのか】

 

今回の改正で悩みやすいのが、「5つの選択肢のうち、どれを選べばよいのか」という点です。

 

大企業であれば、テレワークや保育施設の設置など、選択肢を広く用意できるかもしれません。

 

しかし、中小企業では業種や職種によって、できることと難しいことがあります。

 

たとえば、現場作業や接客業では、テレワークが現実的でない場合があります。

 

一方で、始業・終業時刻の変更であれば、シフトの組み方を工夫することで対応できる可能性があります。

 

また、短時間勤務制度や養育両立支援休暇も、会社の実情に合わせて検討しやすい制度です。

 

大切なのは、他社と同じ制度を形だけ入れることではありません。

 

自社の業務内容、社員数、勤務体制、現場の負担を踏まえて、実際に使える制度を選ぶことです。

 

制度は立派でも、現場で使えなければ意味がありません。

 

逆に、派手な制度でなくても、社員が安心して相談でき、実際に利用できるものであれば十分価値があります。

 

 

【制度だけでなく、申出先を決めておく】

 

育児や介護に関する制度を整えるときに、意外と抜けやすいのが申出先です。

 

社員が制度を使いたいと思ったとき、誰に言えばよいのか。

 

上司なのか。

総務担当者なのか。

社長なのか。

 

ここがあいまいだと、社員は相談しづらくなります。

 

特に育児や介護の話は、家庭の事情やプライバシーに関わる内容です。

 

「誰に話せばよいか分からない」

「現場の上司に話すと広まりそうで不安」

「忙しい時期に言い出しにくい」

 

このように感じる社員もいます。

 

中小企業では、専用の相談窓口を作るのが難しいこともあります。

 

それでも、「まずは総務へ相談してください」「まずは直属の上司と社長で確認します」というように、流れを決めておくだけでも違います。

 

制度を作るときは、必ず申出先と相談の流れもセットで決めておきましょう。

 

 

【個別周知と意向確認も忘れずに】

 

今回の改正では、会社が選んだ制度について、対象となる社員へ個別に周知し、利用の意向を確認することも重要です。

 

つまり、就業規則に書いておくだけでは足りません。

 

対象となる社員に対して、

 

どのような制度があるのか。

いつから使えるのか。

誰に申し出るのか。

利用したい意向があるのか。

 

こうした内容を個別に伝え、確認する必要があります。

 

ここで気をつけたいのは、会社が一方的に制度を説明して終わらせないことです。

 

本人の希望を聞くことも大切です。

 

もちろん、本人の希望をすべてそのまま受け入れなければならない、という意味ではありません。

 

会社の業務状況や人員体制もあります。

 

ただ、最初から「うちは無理です」とするのではなく、本人の希望を聞いたうえで、会社としてできる範囲を考える姿勢が大切です。

 

 

【介護との両立支援も見落とさない】

 

育児に関する制度は比較的イメージしやすいかもしれません。

 

一方で、介護については、社員本人も会社も気づかないうちに負担が大きくなっていることがあります。

 

親の通院付き添い。

介護サービスの手続き。

急な呼び出し。

施設探し。

兄弟姉妹との役割分担。

 

介護は、ある日突然始まることがあります。

 

しかも、いつ終わるか見通しが立ちにくいのが特徴です。

 

社員が介護の悩みを抱えていても、会社に言い出せないまま有給休暇を使い続けたり、遅刻・早退が増えたりすることがあります。

 

その結果、本人も職場も疲弊してしまうことがあります。

 

介護休業や介護休暇の制度があっても、社員が知らなければ使えません。

 

育児だけでなく、介護に関する制度も、社内で分かりやすく周知しておくことが大切です。

 

 

【現場にしわ寄せが行かない工夫も必要】

 

両立支援の制度を整えるときに、事業主の方が心配するのは、やはり現場への影響だと思います。

 

制度を使う社員が出たとき、他の社員に負担が集中してしまう。

 

シフトが組みにくくなる。

 

納期やお客様対応に影響が出る。

 

こうした不安は当然あります。

 

だからこそ、制度を作るときは、利用する社員だけでなく、周囲の社員への影響も考える必要があります。

 

たとえば、

 

業務を属人化させない。

 

複数人で対応できるようにする。

 

繁忙期の対応ルールを決める。

 

シフト作成の時期を早める。

 

業務の優先順位を見直す。

 

一時的に外部人材や短時間スタッフを活用する。

 

このような工夫が考えられます。

 

両立支援は、特定の社員だけを優遇するためのものではありません。

 

社員が長く働き続けられるように、職場全体の仕事の進め方を見直すきっかけでもあります。

 

 

【就業規則や育児・介護休業規程の見直し】

 

法改正への対応で必ず確認したいのが、就業規則や育児・介護休業規程です。

 

古い規程のままになっている会社では、現在の制度に合っていない可能性があります。

 

たとえば、

 

柔軟な働き方の措置が反映されているか。

 

対象者の範囲が正しく書かれているか。

 

申出方法や申出先が明確か。

 

個別周知・意向確認の流れが整理されているか。

 

介護休業や介護休暇の内容が古くなっていないか。

 

パート・アルバイトへの適用関係が整理されているか。

 

こうした点を確認しておきましょう。

 

また、規程を直しただけで安心しないことも大切です。

 

実際に社員へ説明し、管理者にも内容を理解してもらう必要があります。

 

現場の上司が制度を知らないと、社員から相談があったときに誤った対応をしてしまうことがあります。

 

制度改正への対応は、規程の整備と社内周知をセットで進めることが重要です。

 

 

【パート・アルバイトにも関係する場合がある】

 

中小企業では、パートやアルバイトの方が大きな戦力になっていることも多いと思います。

 

育児・介護休業法の制度は、正社員だけに関係するものではありません。

 

雇用形態や契約内容によっては、パート・アルバイトも対象になる場合があります。

 

そのため、「正社員向けの制度だから、パートさんには関係ない」と決めつけないよう注意が必要です。

 

特に、長く勤務しているパート社員や、週の勤務日数が多い短時間勤務者については、制度の対象になるかを確認しておくことが大切です。

 

また、パート社員の中には、子育てや介護をしながら働いている方も多くいます。

 

制度の対象になるかどうかだけでなく、働き続けてもらうためにどのような配慮ができるかを考えることも、人材定着につながります。

 

 

【管理者の理解が職場の空気を変える】

 

育児や介護に関する制度は、社長や総務だけが理解していても十分ではありません。

 

実際に社員から相談を受けるのは、現場の上司であることが多いからです。

 

たとえば、社員が「子どもの都合で勤務時間を相談したい」と言ったとき、上司が

 

「今忙しいから無理」

「みんな我慢している」

「制度はあるけど、使われると困る」

 

と言ってしまえば、社員はそれ以上相談できなくなります。

 

制度はあるのに使えない職場になってしまいます。

 

管理者には、制度の内容だけでなく、相談を受けたときの基本姿勢も伝えておくことが大切です。

 

まず話を聞く。

 

その場で否定しない。

 

会社として確認してから回答する。

 

本人の事情を必要以上に周囲へ話さない。

 

現場への影響も含めて調整する。

 

こうした対応ができるだけで、社員の安心感は大きく変わります。

 

 

【制度を整えることは採用にもつながる】

 

育児や介護と仕事を両立しやすい会社は、採用面でも強みになります。

 

中小企業では、大企業のように高い給与や充実した福利厚生で勝負するのが難しいこともあります。

 

しかし、

 

相談しやすい。

家庭の事情に一定の理解がある。

働き方を一緒に考えてくれる。

長く働ける環境がある。

 

こうした点は、求職者にとって大きな安心材料になります。

 

特に、経験のある人材や子育て世代の方にとって、働き続けやすい職場かどうかは重要な判断材料です。

 

制度を整えることは、今いる社員のためだけではありません。

 

これから採用する人に対しても、「この会社なら長く働けそう」と感じてもらうきっかけになります。

 

 

【中小企業が今確認したいチェックポイント】

 

育児・介護休業法改正への対応として、中小企業が今確認したいポイントを整理します。

 

育児・介護休業規程は最新の内容になっているか。

 

3歳から小学校就学前の子を育てる社員への柔軟な働き方の措置を検討しているか。

 

5つの選択肢の中から、自社で実際に運用できる制度を2つ以上選んでいるか。

 

対象社員への個別周知と意向確認の流れを決めているか。

 

申出先や相談窓口が明確になっているか。

 

パート・アルバイトの対象範囲を確認しているか。

 

介護休業や介護休暇の制度も社内で周知しているか。

 

現場の上司が制度内容を理解しているか。

 

制度利用時に周囲の社員へ負担が偏らない工夫を考えているか。

 

就業規則や社内ルールに反映しているか。

 

すべてを一度に完璧に整える必要はありません。

 

まずは、自社の規程が現在の法改正に対応しているかを確認し、次に、実際に社員から相談があったときの流れを整理することから始めるとよいでしょう。

 

 

【まとめ:育児・介護との両立は人材定着のための職場ルール】

 

育児・介護休業法の改正により、会社にはより具体的な両立支援の対応が求められるようになっています。

 

特に中小企業では、制度を形だけ整えるのではなく、実際に使える職場ルールにすることが大切です。

 

子育てや介護は、誰にでも起こり得る生活上の事情です。

 

そのたびに社員が退職を選ばなくてもよいように、会社としてできる範囲の働き方を用意しておくことは、人材定着の面でも大きな意味があります。

 

もちろん、中小企業には人員や業務上の限界もあります。

 

すべての希望に応えることは難しいかもしれません。

 

それでも、相談先を決めること。

 

制度を分かりやすく周知すること。

 

現場任せにせず、会社として対応の流れを作ること。

 

これだけでも、社員の安心感は大きく変わります。

 

育児・介護休業法への対応は、単なる法改正対応ではありません。

 

これからも社員に長く働いてもらうための、職場づくりの見直しですので、あらためて社内ルールを確認してみてはいかがでしょうか。