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ブログ
作成日:2026/08/11
社員の副業・兼業を認める前に確認したいこと

働き方が多様化する中で、社員から「副業をしてもよいですか」と相談される場面が増えています。

 

以前は、副業を原則禁止としている会社も多くありました。

 

しかし最近では、収入を増やしたい、スキルを広げたい、将来に備えたいといった理由から、副業・兼業に関心を持つ社員も少なくありません。

 

中小企業の事業主の方にとっては、

 

「副業を認めると本業に支障が出るのではないか」

 

「長時間労働になったら会社の責任はどうなるのか」

 

「情報漏えいや競業が心配」

 

「就業規則はどうしておけばよいのか」

 

といった不安もあると思います。

 

副業・兼業は、単に認めるか禁止するかだけで考えると、実務で困ることがあります。

 

大切なのは、自社としてどのような場合に認め、どのような場合に制限するのかを、あらかじめルール化しておくことです。

 

今回は、中小企業が社員の副業・兼業を考える際に確認しておきたいポイントを、社会保険労務士の視点から整理します。

 

 

【副業・兼業は一律禁止でよいのか】

 

副業・兼業について、まず考えたいのは「会社が一律に禁止してよいのか」という点です。

 

会社としては、社員には本業に集中してほしいという気持ちがあると思います。

 

特に中小企業では、一人ひとりの役割が大きいため、副業によって疲労がたまったり、勤務態度に影響が出たりすると困る場面もあります。

 

ただし、勤務時間外の過ごし方は、基本的には社員本人の自由な時間でもあります。

 

そのため、会社が合理的な理由なく、すべての副業・兼業を一律に禁止することには注意が必要です。

 

一方で、どのような副業でも自由に認めなければならない、というわけでもありません。

 

本業に支障が出る場合。

 

会社の秘密情報が漏れるおそれがある場合。

 

競業にあたる場合。

 

会社の信用を傷つけるおそれがある場合。

 

長時間労働により健康面の問題が生じる場合。

 

こうしたケースでは、会社として一定の制限を検討することがあります。

 

つまり、副業・兼業は「全部禁止」か「全部自由」かではなく、会社として判断基準を持つことが大切です。

 

 

【まず就業規則を確認する】

 

社員の副業・兼業について相談があったとき、最初に確認したいのが就業規則です。

 

就業規則に副業・兼業に関する規定があるか。

 

ある場合、その内容が今の考え方や実務に合っているか。

 

ここを確認しましょう。

 

古い就業規則では、

 

「会社の許可なく他の業務に従事してはならない」

 

「副業は禁止する」

 

といった書き方になっていることがあります。

 

もちろん、会社の許可制にすること自体が直ちに問題というわけではありません。

 

ただし、許可するかどうかの基準があいまいだと、社員から見て不公平に感じられることがあります。

 

ある社員には認めたのに、別の社員には認めなかった。

 

理由を説明できないまま不許可にした。

 

会社に黙って副業する社員が出てきた。

 

このようなトラブルを防ぐためにも、就業規則や社内ルールで、届出方法や判断基準を整えておくことが大切です。

 

 

【届出制にする場合のポイント】

 

中小企業では、副業・兼業を完全に自由にするよりも、事前の届出制にする方が実務上は管理しやすいことがあります。

 

たとえば、社員が副業を始める前に、会社へ次のような内容を届け出てもらう方法です。

 

副業先の会社名や業務内容。

 

勤務日や勤務時間。

 

雇用契約なのか、業務委託なのか。

 

本業への影響がないか。

 

競業にあたらないか。

 

会社の情報を扱う可能性がないか。

 

このような情報があれば、会社として副業・兼業のリスクを確認しやすくなります。

 

ただし、必要以上に細かい情報まで求めるのは避けた方がよいでしょう。

 

あくまで、本業への支障、健康管理、競業、秘密保持などを確認するために必要な範囲にとどめることが大切です。

 

 

【労働時間の通算に注意する】

 

副業・兼業で特に注意したいのが、労働時間の管理です。

 

社員が本業とは別に、他社でも雇用されて働く場合、本業と副業先の労働時間を通算して考える必要が出てくることがあります。

 

たとえば、本業で1日8時間働いた後に、副業先でさらに働くようなケースです。

 

この場合、労働時間が長くなりすぎると、健康面の問題が生じる可能性があります。

 

また、割増賃金の取扱いが問題になることもあります。

 

一方で、副業が業務委託や個人事業として行われる場合など、働き方によって取扱いが変わることもあります。

 

ここは非常に誤解が起きやすい部分です。

 

「副業は本人の自由だから会社は何も見なくてよい」

 

「副業先の時間まで全部会社が管理しなければならない」

 

どちらか一方に単純に決めつけるのではなく、副業の形態や勤務実態を確認しながら、必要な対応を考えることが大切です。

 

 

【健康管理の視点を忘れない】

 

副業・兼業で会社が特に気をつけたいのは、社員の健康です。

 

本業が終わった後や休日に副業を続けると、本人が思っている以上に疲労がたまることがあります。

 

睡眠時間が減る。

 

遅刻や欠勤が増える。

 

集中力が落ちる。

 

ミスが増える。

 

体調不良が続く。

 

このような変化が出てくる場合もあります。

 

中小企業では、社員数が少ない分、一人の不調が現場全体に影響します。

 

副業を認める場合でも、会社としては本業に支障が出ていないか、長時間労働になっていないかを確認する視点が必要です。

 

特に、運転業務、現場作業、機械を扱う業務、介護や医療に関わる業務などでは、疲労による事故やミスにも注意が必要です。

 

副業を認めることと、健康を放置することは別の話です。

 

 

【本業に支障が出る場合の対応】

 

副業をしている社員について、本業に支障が出ることもあります。

 

たとえば、

 

遅刻や欠勤が増えた。

 

勤務中に眠そうにしている。

 

仕事のミスが増えた。

 

急なシフト変更を求めることが増えた。

 

会社の業務に集中できていない。

 

このような場合、会社としては状況を確認する必要があります。

 

ただし、いきなり「副業をやめなさい」と言うのではなく、まずは事実を確認しましょう。

 

いつから勤務態度に変化が出ているのか。

 

副業の勤務時間はどのくらいか。

 

本人の体調はどうか。

 

本業の業務量にも問題がないか。

 

副業だけが原因なのか。

 

こうした点を整理したうえで、必要に応じて副業の見直しや制限を話し合うことが大切です。

 

本業への支障が明らかな場合には、就業規則に基づいて対応することも考えられます。

 

そのためにも、あらかじめ副業・兼業に関するルールを整えておく必要があります。

 

 

【情報漏えいと競業にも注意】

 

副業・兼業では、情報漏えいや競業のリスクもあります。

 

たとえば、自社と同じ業種の会社で副業をする場合。

 

取引先に関係する仕事をする場合。

 

会社で得たノウハウや顧客情報を副業に使う場合。

 

SNSや副業サイトで会社名や内部情報を出してしまう場合。

 

このようなケースでは、会社として慎重に確認する必要があります。

 

中小企業では、社員が顧客情報や取引先情報、見積情報、営業ノウハウなどに触れていることも多いです。

 

副業先で悪意なく話した内容が、結果として会社の不利益につながることもあります。

 

副業を認める場合でも、秘密保持や競業避止については、就業規則や誓約書で確認しておくと安心です。

 

特に、営業職、技術職、管理職などは、扱う情報の範囲が広いため注意が必要です。

 

 

【副業を認めるメリットもある】

 

副業・兼業はリスクだけではありません。

 

会社にとっても、一定のメリットがあります。

 

社員が社外で新しい経験を積む。

 

スキルや人脈が広がる。

 

収入面の不安が減る。

 

仕事への意欲が高まる。

 

将来のキャリアを考えるきっかけになる。

 

副業で得た経験が、本業に活きることもあります。

 

たとえば、別の業界の仕事を経験することで、接客や営業、IT、企画、発信力などが磨かれることがあります。

 

また、会社が副業を頭ごなしに禁止しないことで、社員から「この会社は働き方を相談しやすい」と感じてもらえる場合もあります。

 

もちろん、すべての副業が会社にプラスになるわけではありません。

 

ただ、副業・兼業を単にリスクとして見るのではなく、ルールを整えたうえで活かす視点も大切です。

 

 

【中小企業で起こりやすい副業トラブル】

 

中小企業で起こりやすい副業トラブルには、次のようなものがあります。

 

社員が会社に黙って副業していた。

 

副業による疲労で本業のミスが増えた。

 

同業他社で副業していた。

 

副業先で会社の情報を話していた。

 

勤務時間外に会社の備品やパソコンを副業に使っていた。

 

SNSで副業の宣伝をする中で会社名が出ていた。

 

副業のために急な休みを希望するようになった。

 

会社が副業を一律禁止したため、社員との関係が悪くなった。

 

これらの多くは、事前のルールがあいまいなことから起こります。

 

「副業は禁止なのか、届出制なのか」

 

「どんな副業なら認められるのか」

 

「どんな場合は認められないのか」

 

「本業に支障が出たらどうするのか」

 

このあたりを決めておくだけでも、トラブルはかなり防ぎやすくなります。

 

 

【就業規則に入れておきたい内容】

 

副業・兼業については、就業規則に基本的なルールを入れておくことをおすすめします。

 

たとえば、次のような内容です。

 

副業・兼業を希望する場合の届出方法。

 

会社が確認する事項。

 

本業に支障がある場合は制限できること。

 

会社の秘密情報を漏らしてはならないこと。

 

競業にあたる副業は認めない場合があること。

 

会社の信用を損なう副業は認めない場合があること。

 

長時間労働や健康障害のおそれがある場合は見直しを求めること。

 

届出内容に変更があった場合の再届出。

 

会社の備品や情報を副業に使ってはならないこと。

 

ここで大切なのは、会社の実態に合ったルールにすることです。

 

インターネットで見つけた規定をそのまま貼り付けるだけでは、自社に合わないことがあります。

 

業種、職種、社員数、扱う情報、勤務形態によって、必要なルールは変わります。

 

副業・兼業の規定は、自社の働き方に合わせて作ることが大切です。

 

 

【中小企業が今確認したいチェックポイント】

 

社員の副業・兼業について、中小企業が確認したいポイントを整理します。

 

就業規則に副業・兼業の規定があるか。

 

規定が古いままになっていないか。

 

副業を届出制にするのか、許可制にするのか決めているか。

 

認める場合と制限する場合の基準があるか。

 

本業への支障をどう確認するか決めているか。

 

副業先で雇用される場合の労働時間管理を理解しているか。

 

社員の健康管理をどう行うか考えているか。

 

競業や情報漏えいのリスクを整理しているか。

 

会社の備品や情報を副業に使わないルールがあるか。

 

管理者が副業相談を受けたときの対応を理解しているか。

 

すべてを一度に完璧に整える必要はありません。

 

まずは、自社の就業規則に副業・兼業の規定があるかを確認し、実際に社員から相談があったときの対応を考えておくとよいでしょう。

 

 

【まとめ:副業・兼業はルールを整えてから向き合う】

 

副業・兼業への関心は、今後も続いていくと考えられます。

 

社員にとっては、収入の確保やスキルアップ、将来のキャリアを考える手段になることがあります。

 

一方で、会社にとっては、本業への支障、長時間労働、健康管理、情報漏えい、競業などのリスクもあります。

 

だからこそ、副業・兼業は「禁止するか、自由にするか」だけで考えないことが大切です。

 

会社として、どのような副業なら認めるのか。

 

どのような場合は制限するのか。

 

社員には何を届け出てもらうのか。

 

労働時間や健康状態をどう確認するのか。

 

情報漏えいをどう防ぐのか。

 

こうしたルールを整えておくことで、社員も会社も安心して対応しやすくなります。

 

中小企業では、社長や上司の判断でその都度対応しているケースもあります。

 

しかし、副業・兼業は今後さらに相談が増える可能性があります。

 

その場その場で対応するのではなく、就業規則や社内ルールとして整理しておくことが大切です。

 

社員の多様な働き方に向き合いながら、会社の事業と社員の健康を守る。

 

そのためにも、自社の副業・兼業ルールを一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

※本記事は、2026年8月7日時点で公表されている厚生労働省等の情報をもとに作成しています。制度内容や取扱いは変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省等の公的情報をご確認ください。

 

※副業・兼業の取扱いは、雇用契約か業務委託か、業務内容、本業への影響、労働時間、就業規則の内容などによって判断が異なる場合があります。実際の対応にあたっては、自社の実態に合わせて確認することをおすすめします。