人手不足が続く中で、採用面接はとても大切な時間です。
限られた時間の中で、
「この人は仕事を任せられそうか」
「職場になじめそうか」
「長く働いてもらえそうか」
を確認したいと考える事業主の方も多いと思います。
ただ、面接で何気なく聞いた質問が、実は応募者本人の適性や能力とは関係のない内容だった、ということがあります。
たとえば、
「ご実家はどちらですか」
「ご両親は何をされていますか」
「結婚の予定はありますか」
「尊敬する人は誰ですか」
「支持している政党はありますか」
このような質問は、会話を和ませるつもりで聞いたとしても、採用選考では注意が必要です。
採用面接で大切なのは、応募者の人柄を知ることではなく、まずは募集している仕事に必要な適性や能力を確認することです。
今回は、採用面接で気をつけたい質問と、会社が整えておきたい応募者対応について、社会保険労務士の視点からお伝えします。
【採用面接は何を確認する場なのか】
採用面接は、応募者を深く詮索する場ではありません。
募集している仕事に対して、その人が必要な経験、能力、意欲、勤務条件を満たしているかを確認する場です。
たとえば、
これまでどのような仕事をしてきたか。
今回の仕事に活かせる経験はあるか。
勤務時間や勤務日数は合うか。
必要な資格やスキルがあるか。
チームで働くうえで大切にしていることは何か。
仕事で困ったときに、どのように対応してきたか。
こうした質問は、業務との関係が分かりやすい内容です。
一方で、本人の家族、出身地、思想、信条、生活環境などは、仕事に必要な適性や能力とは直接関係しないことが多いです。
面接では、「知りたいこと」ではなく、「採用判断に必要なこと」を聞く。
この視点を持つことが大切です。
【聞いてしまいがちな質問に注意】
採用面接で注意したいのは、悪気なく聞いてしまう質問です。
たとえば、
「ご家族は何人ですか」
「親御さんは近くに住んでいますか」
「ご主人は転勤がありますか」
「お子さんの予定はありますか」
「実家から通うのですか」
「家は持ち家ですか、賃貸ですか」
こうした質問は、会話の流れで聞いてしまいやすいものです。
しかし、家族構成、家族の職業、家庭環境、住宅状況などは、本人に責任のない事項として、採用選考で把握することに注意が必要です。
また、
「どんな本を読みますか」
「尊敬する人物は誰ですか」
「人生観を教えてください」
「宗教はありますか」
「支持政党はありますか」
といった質問も、思想や信条に関わる内容として注意が必要です。
応募者が答えにくいと感じるだけでなく、会社がその回答を採否に影響させたのではないかと受け取られる可能性もあります。
面接では、雑談のつもりでも、聞かれた側は「採用に関係するのだろうか」と感じます。
その感覚を忘れないことが大切です。
【結婚・妊娠・出産に関する質問も慎重に】
採用面接では、結婚、妊娠、出産に関する質問にも注意が必要です。
たとえば、
「結婚の予定はありますか」
「お子さんの予定はありますか」
「小さいお子さんがいて残業できますか」
「家庭との両立は大丈夫ですか」
このような質問は、女性応募者に対して特に聞かれやすい傾向があります。
会社としては、急な休みや残業対応が気になるのかもしれません。
ただ、結婚や出産の予定を直接聞くことは、応募者に不安や不快感を与える可能性があります。
確認したいのが勤務条件であれば、聞き方を変えましょう。
たとえば、
「この求人は月に数回、残業が発生する可能性があります。対応は可能ですか」
「土曜日に月1回勤務がありますが、勤務条件として問題ありませんか」
「シフトは前月に決める運用ですが、その働き方で問題ありませんか」
このように、家庭事情ではなく、業務上必要な勤務条件として確認することが大切です。
【健康状態を聞くときも仕事との関係を考える】
健康状態についても、何でも自由に聞いてよいわけではありません。
もちろん、業務に必要な範囲で確認が必要な場合はあります。
たとえば、重量物を扱う仕事、車の運転を伴う仕事、高所作業、夜勤がある仕事などでは、安全に働けるかどうかを確認する必要があります。
ただし、
「持病はありますか」
「過去にメンタル不調で休んだことはありますか」
「病歴を教えてください」
というように、広く病歴を聞くことは慎重に考える必要があります。
大切なのは、仕事との関係です。
確認するなら、
「この業務では、1日数回、20kg程度の荷物を運ぶ作業があります。対応は可能ですか」
「運転業務がありますが、業務に支障となる事情はありますか」
「夜勤を含むシフト勤務ですが、勤務条件として問題ありませんか」
というように、業務内容を具体的に伝えたうえで確認するとよいでしょう。
応募者の個人的な事情を探るのではなく、仕事を安全に行えるかを確認する姿勢が大切です。
【面接担当者によって質問がバラバラになっていないか】
採用面接では、面接担当者によって質問内容が大きく変わることがあります。
社長が面接するとき。
現場責任者が面接するとき。
総務担当者が面接するとき。
それぞれの感覚で質問していると、聞いてよいこと、避けるべきことの線引きがあいまいになります。
特に、現場の責任者が面接に入る場合は注意が必要です。
現場としては、
「急な休みは困る」
「長く働ける人がいい」
「職場になじめる人か知りたい」
という気持ちがあります。
その結果、家庭環境や私生活に踏み込んだ質問をしてしまうことがあります。
面接担当者には、事前に質問してよい内容、避けたい内容を共有しておきましょう。
できれば、面接で確認する項目を簡単なシートにしておくと安心です。
【応募者に安心感を持ってもらう面接にする】
採用面接は、会社が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が会社を見る場でもあります。
面接で不適切な質問があると、応募者は不安になります。
「この会社は、家族構成で判断するのだろうか」
「結婚や出産を理由に不利に扱われるのではないか」
「プライベートに踏み込みすぎる会社かもしれない」
そう感じれば、内定を出しても辞退される可能性があります。
反対に、業務内容や勤務条件を丁寧に説明し、必要な範囲で確認する面接は、応募者に安心感を与えます。
採用が難しい時代だからこそ、面接での印象はとても大切です。
会社の質問の仕方には、その会社の考え方が表れます。
応募者を一人の働く人として尊重する姿勢が、採用力にもつながっていきます。
【会社が確認したいチェックポイント】
採用面接について、確認したいポイントを整理します。
面接で確認する内容は、仕事内容や勤務条件と関係しているか。
本籍、出生地、家族構成、家族の職業などを聞いていないか。
住宅状況や家庭環境を採用判断に使っていないか。
宗教、支持政党、思想、人生観などを聞いていないか。
結婚、妊娠、出産の予定を直接聞いていないか。
健康状態を聞く場合、業務上必要な範囲に限っているか。
面接担当者ごとに質問内容がバラバラになっていないか。
面接用の質問項目や評価基準を用意しているか。
応募者に仕事内容、勤務時間、賃金、休日をきちんと説明しているか。
採用するかどうかを、本人の適性や能力に基づいて判断しているか。
面接は、慣れている人ほど自己流になりやすいものです。
一度、自社の面接でどのような質問をしているかを見直してみるとよいでしょう。
【まとめ:面接では「仕事に関係すること」を聞く】
採用面接で大切なのは、応募者本人の適性や能力を、仕事に関係する範囲で確認することです。
会社としては、長く働いてもらえるか、職場になじめるか、急な休みがないかなど、いろいろなことが気になると思います。
ただ、その不安をそのまま質問にすると、家族、生活環境、思想、結婚、出産など、採用判断に使うべきではない内容に踏み込んでしまうことがあります。
聞くべきなのは、応募者の私生活ではなく、仕事に必要な条件です。
勤務時間に対応できるか。
必要な業務を行えるか。
求める経験やスキルがあるか。
安全に働くうえで問題がないか。
仕事内容を理解したうえで働く意思があるか。
このように、質問を仕事に結びつけて考えることが大切です。
面接での一言は、応募者にとって会社の印象を大きく左右します。
「この会社は、きちんと人を見てくれている」
そう感じてもらえる面接は、採用後の信頼関係にもつながります。
応募者に選ばれる会社になるためにも、面接の質問内容や評価基準を一度見直してみてはいかがでしょうか。

