社員を採用したときや退職者が出たとき、社会保険や雇用保険の手続きはきちんと整理できていますか。
入社や退職の場面では、雇用契約書、給与、勤怠、貸与品、引き継ぎなど、確認することがたくさんあります。
その中で、意外と漏れやすいのが保険関係の手続きです。
「入社したけれど、雇用保険の手続きが遅れていた」
「退職後に離職票のことで連絡が来た」
「社会保険料の控除が合っているか不安」
「パートの加入対象を見落としていた」
このようなことは、どの会社でも起こり得ます。
今回は、入社・退職時に会社が確認しておきたい社会保険や雇用保険の基本を、社会保険労務士の視点からお伝えします。
【入社時は雇用契約だけで終わらない】
社員を採用したときは、雇用契約書や労働条件通知書を整えるだけでなく、保険の加入対象になるかを確認する必要があります。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険は、それぞれ加入要件があります。
正社員だから必ず対象、パートだから対象外、と単純に判断できるものではありません。
週の所定労働時間。
雇用契約の期間。
勤務日数。
学生かどうか。
会社の規模や働き方。
こうした条件によって、加入の有無が変わる場合があります。
特に最近は、短時間で働くパートやアルバイトの社会保険加入についても確認が必要な場面が増えています。
「前からこの扱いだから大丈夫」と思い込まず、入社時に一人ずつ確認しておくことが大切です。
【入社時に確認したい情報】
入社時の手続きでは、本人から必要な情報を早めに集めておくことが大切です。
氏名、生年月日、住所。
マイナンバー。
前職の雇用保険被保険者番号。
扶養家族の有無。
基礎年金番号が必要になる場面。
給与の支払口座。
通勤経路。
こうした情報がそろっていないと、手続きが遅れることがあります。
また、扶養家族がいる場合は、健康保険の被扶養者に該当するかどうかの確認も必要になります。
本人が「扶養に入れたい」と言っている場合でも、収入や続柄、生計維持関係などを確認しなければなりません。
入社日は、現場では忙しい日になりがちです。
できれば、入社前に必要書類の案内をしておくとスムーズです。
【退職時は資格喪失と離職票を確認する】
退職時には、健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続きや、雇用保険の資格喪失手続きが必要になります。
特に雇用保険では、本人が離職票を希望するかどうかの確認も大切です。
離職票は、退職後に基本手当、いわゆる失業給付の手続きをする際に必要になることがあります。
会社側が、
「次の就職先が決まっているから不要だろう」
と判断してしまうのではなく、本人の希望を確認しておくと安心です。
また、退職理由の記載にも注意が必要です。
自己都合退職なのか。
契約期間満了なのか。
会社都合にあたる事情があるのか。
本人の認識と会社の認識が違っていると、後からトラブルになることがあります。
退職届、雇用契約書、更新時の書類、面談記録などを確認しながら、事実に沿って整理しましょう。
【社会保険料の控除も間違いやすい】
入社・退職時に間違いやすいのが、社会保険料の控除です。
入社月の保険料はどうするのか。
退職月の保険料は控除するのか。
月末退職と月中退職で扱いが変わるのか。
同じ月に入社して退職した場合はどうなるのか。
このあたりは、給与計算にも関係します。
特に退職時は、最終給与の計算と一緒に処理するため、確認漏れが起こりやすいところです。
本人から見ても、最後の給与から何が引かれているのかは気になる部分です。
説明できるようにしておくと、余計な不信感を防ぎやすくなります。
【資格確認書や貸与品の返却も忘れない】
退職時には、保険の手続きだけでなく、会社から渡しているものの返却も確認します。
資格確認書など会社経由で交付・管理しているもの。
社員証。
制服。
名刺。
鍵やカード。
会社のパソコン。
スマートフォン。
業務資料。
退職日までに、何を、誰に返してもらうのかを決めておきましょう。
最近は、紙の書類だけでなく、会社のメールアカウントやチャットツール、クラウドサービスの権限管理も重要です。
社会保険の資格喪失とあわせて、会社の情報管理も退職手続きの一部として考えておきたいところです。
【手続きの流れを一覧にしておく】
入社・退職時の手続きは、慣れている担当者がいればスムーズに進みます。
ただ、その人だけに任せていると、担当者が休んだときや退職したときに困ることがあります。
おすすめは、簡単なチェックリストを作っておくことです。
入社時に確認する書類。
社会保険の加入判定。
雇用保険の加入判定。
扶養家族の確認。
資格取得届の提出。
退職時の資格喪失届。
離職票の希望確認。
最終給与の確認。
貸与品の返却。
アカウント停止。
このように流れを見える化しておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。
難しいマニュアルでなくても構いません。
「誰が見ても最低限の流れが分かる」状態にしておくことが大切です。
【会社が確認したいチェックポイント】
入社・退職時の手続きについて、確認したいポイントを整理します。
入社時に社会保険と雇用保険の加入対象を確認しているか。
パートやアルバイトも含めて加入要件を確認しているか。
本人から必要な情報を早めに集めているか。
扶養家族の有無や被扶養者の確認をしているか。
退職時に資格喪失手続きを忘れていないか。
離職票が必要かどうか本人に確認しているか。
退職理由を事実に沿って整理しているか。
最終給与で社会保険料の控除を確認しているか。
貸与品や会社アカウントの管理をしているか。
入社・退職時のチェックリストを作っているか。
手続きは、起きてから調べるよりも、先に流れを決めておく方が安心です。
【まとめ:入社・退職手続きは信頼にも関わる】
入社・退職時の社会保険や雇用保険の手続きは、単なる事務処理ではありません。
入社時の手続きが遅れると、社員は不安になります。
退職時の書類が遅れると、退職後の生活に影響することもあります。
会社としては、雇用契約や給与だけでなく、保険の加入・喪失、扶養、離職票、最終給与、貸与品まで一連の流れとして整理しておくことが大切です。
「入社したら何を確認するのか」
「退職が決まったら何をするのか」
この流れが決まっているだけで、担当者の負担も、社員の不安も減らせます。
人を雇い、安心して働いてもらい、退職時にもきちんと送り出す。
そのためにも、入社・退職時の手続きを一度見直してみてはいかがでしょうか。

