社員から、
「上司の言い方がつらいです」
「同僚から嫌なことを言われています」
「相談したいことがあります」
と言われたとき、会社としてどう対応すればよいでしょうか。
ハラスメント相談は、受けた側も戸惑いやすいテーマです。
「どこまで聞けばいいのか」
「本当にハラスメントなのか」
「相手にも事情があるのではないか」
「大ごとにしたくない」
そう感じることもあると思います。
ただ、最初の対応を間違えると、相談した社員がさらに傷ついたり、職場内の不信感が大きくなったりすることがあります。
【まずは最後まで話を聴く】
ハラスメント相談を受けたとき、最初に大切なのは、話を途中で否定しないことです。
「それくらいよくあることだよ」
「あなたにも原因があるんじゃない?」
「悪気はなかったと思うよ」
「もう少し我慢できない?」
このような言葉は、相談した社員をさらに追い詰めることがあります。
もちろん、相談内容がすべて事実かどうかは、この時点ではまだ分かりません。
ただ、最初から疑ったり、決めつけたりするのではなく、まずは本人が何に困っているのかを落ち着いて聴くことが大切です。
いつ、どこで、誰から、どのような言動があったのか。
それによって本人がどう感じ、仕事にどのような影響が出ているのか。
まずは事実関係を整理するために、丁寧に確認していきます。
【その場で結論を出そうとしない】
相談を受けたときに、すぐに、
「それはハラスメントです」
「それはハラスメントではありません」
「あの人が悪いですね」
と結論を出すのは避けた方がよいです。
ハラスメントの判断には、言動の内容、状況、頻度、関係性、業務上の必要性など、さまざまな事情が関係します。
相談者の話だけでなく、相手方や関係者からも確認が必要になる場合があります。
最初の面談では、結論を出すことよりも、
相談内容を受け止めること。
事実を整理すること。
今後の進め方を説明すること。
本人の安全や就業上の不安を確認すること。
ここを大切にしましょう。
会社として「きちんと確認します」と伝えるだけでも、相談者の安心につながることがあります。
【プライバシーを守る】
ハラスメント相談では、プライバシーの保護がとても重要です。
相談内容には、本人の心身の状態、人間関係、家庭の事情、過去の出来事など、繊細な情報が含まれることがあります。
そのため、相談を受けた人が、軽い気持ちで周囲に話してしまうことは避けなければなりません。
「〇〇さんが相談してきたらしい」
「△△さんが加害者らしい」
という話が職場に広がると、相談者も相手方も働きにくくなります。
相談内容を誰に共有するのか。
どの範囲で調査するのか。
記録をどこに保管するのか。
このあたりを慎重に考える必要があります。
相談を受けた段階で、本人にも「必要な範囲で確認を進めること」「プライバシーに配慮すること」を伝えておくとよいでしょう。
【相談したことを理由に不利益な扱いをしない】
ハラスメント相談で特に注意したいのが、不利益な取扱いです。
相談したことを理由に、
シフトを減らす。
担当業務から外す。
評価を下げる。
配置を変える。
退職を促す。
職場で孤立させる。
このような対応をしてはいけません。
会社としては、本人を守るつもりで配置を変えたつもりでも、本人から見ると「相談したら不利益を受けた」と感じることがあります。
もちろん、状況によっては、相談者と相手方を一時的に離すなどの配慮が必要な場合もあります。
ただし、その場合でも、本人の意向を確認しながら、できるだけ不利益にならない方法を考えることが大切です。
「相談した人が損をする職場」になってしまうと、次から誰も声を上げられなくなります。
【事実確認は落ち着いて進める】
相談内容によっては、相手方や周囲の社員に話を聞く必要があります。
その際も、感情的に進めないことが大切です。
いきなり相手方を呼び出して、
「あなた、ハラスメントをしたそうですね」
という聞き方をすると、相手方も強く反発する可能性があります。
まずは、確認したい事実を整理しましょう。
いつの出来事か。
どのような発言や行動があったのか。
その場に誰がいたのか。
メールやチャットなどの記録はあるのか。
同じようなことが繰り返されているのか。
聞き取りをするときは、相談者、相手方、関係者それぞれの話を分けて記録します。
誰が何を話したのかが混ざらないようにすることが大切です。
事実確認は、誰かを一方的に責めるためではなく、職場で何が起きているのかを正確に把握するために行います。
【相談記録を残しておく】
ハラスメント相談を受けたときは、記録を残しておきましょう。
記録する内容は、難しいものでなくても構いません。
相談を受けた日。
相談者の氏名。
対応した担当者。
相談内容の概要。
本人が希望していること。
会社が説明したこと。
今後の対応予定。
事実確認の経過。
最終的な対応内容。
このような内容を整理しておくと、後から経過を確認しやすくなります。
ただし、記録には個人情報やプライバシーに関わる内容が含まれます。
誰でも見られる場所に保存するのではなく、管理する人や保管場所を決めておく必要があります。
記録は、会社を守るためだけではありません。
相談者に対して、会社がきちんと対応したことを残す意味もあります。
【必要な場合は職場環境を整える】
事実確認の結果、ハラスメントにあたる可能性がある場合や、職場環境に問題がある場合は、必要な対応を考えます。
行為者への注意指導。
配置や業務分担の見直し。
相談者への配慮。
管理職への指導。
職場全体への周知。
再発防止のための研修。
就業規則に基づく対応。
状況によって必要な対応は変わります。
ここで大切なのは、「相談を受けたけれど、結局何も変わらなかった」とならないことです。
もちろん、相談内容がすべて事実と確認できるとは限りません。
それでも、職場内にコミュニケーションの問題や管理職の指導方法の課題が見えた場合は、改善につなげることができます。
ハラスメント相談は、職場の問題に気づくきっかけでもあります。
【相談窓口と就業規則を確認する】
ハラスメント対応では、相談窓口や就業規則の整備も大切です。
相談先が決まっていないと、社員は誰に話せばよいか分かりません。
社長に直接言うしかない。
上司が相手なので相談できない。
総務担当者がいない。
相談しても秘密が守られるか不安。
このような状態では、問題が表に出にくくなります。
会社の規模に合わせて、相談窓口を決めておきましょう。
社内だけで難しい場合は、外部相談窓口や専門家の活用を考える方法もあります。
また、就業規則には、ハラスメントの禁止、相談先、不利益取扱いの禁止、懲戒の可能性などを定めておくことが大切です。
ルールがあることで、会社としても対応しやすくなります。
【会社が確認したいチェックポイント】
ハラスメント相談を受けたときの対応について、確認したいポイントを整理します。
相談を途中で否定せず、最後まで聴いているか。
その場でハラスメントかどうかを決めつけていないか。
いつ、どこで、誰が、何をしたのかを整理しているか。
相談者の希望や不安を確認しているか。
相談内容のプライバシーを守っているか。
相談したことを理由に不利益な扱いをしていないか。
相手方や関係者への事実確認を慎重に行っているか。
相談記録や対応記録を残しているか。
必要に応じて職場環境の改善を検討しているか。
相談窓口や就業規則の内容を社員に周知しているか。
ハラスメント相談は、最初の対応がとても大切です。
「大ごとにしたくない」と思って放置するのではなく、落ち着いて、記録を残しながら進めましょう。
【まとめ:相談しやすい職場は、会社を守ることにもつながる】
ハラスメント相談を受けることは、会社にとって決して軽いことではありません。
対応を間違えると、相談者がさらに傷ついたり、職場の不信感が広がったりすることがあります。
一方で、早い段階で相談してもらえれば、深刻なトラブルになる前に対応できる可能性もあります。
大切なのは、相談を受けたときに、まず落ち着いて話を聴くこと。
その場で決めつけず、事実を整理すること。
プライバシーを守ること。
相談したことを理由に不利益な扱いをしないこと。
必要に応じて、職場環境の改善につなげることです。
ハラスメント相談は、会社を責めるためだけのものではありません。
職場で起きている小さな違和感に気づき、働きやすい環境を整えるきっかけにもなります。
「相談窓口はあるけれど、実際の対応手順は決まっていない」
「管理職が相談を受けたときにどうすればよいか分からない」
という会社は、一度、相談対応の流れを確認してみてはいかがでしょうか。
社員が安心して相談できる職場にしておくことは、会社を守る労務管理にもつながります。
出典:
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
厚生労働省「あかるい職場応援団」
厚生労働省「職場におけるハラスメントについて事業主が雇用管理上講ずべき措置」
厚生労働省「パワーハラスメント防止措置」
厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
※本記事は、2026年8月25日時点で公表されている厚生労働省等の情報をもとに作成しています。制度内容や取扱いは変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省等の公的情報をご確認ください。

