社員の遅刻や早退が続くと、現場では小さくない負担が生まれます。
始業時間になっても来ない。
急な早退が何度もある。
理由を聞いてもあいまい。
周囲の社員がフォローしている。
このような状態が続くと、事業主の方や上司としては、
「どこまで注意してよいのか」
「給与から引いてもよいのか」
「何度も続く場合はどう対応すればよいのか」
と悩むことがあると思います。
遅刻や早退は、1回だけ見れば小さなことに見えるかもしれません。
しかし、繰り返されると職場の秩序や周囲の社員の納得感にも関わります。
今回は、遅刻・早退が多い社員に対応するときに、会社が確認しておきたい勤怠ルールと面談記録について、社会保険労務士の視点からお伝えします。
【まずは事実を確認する】
遅刻や早退が気になるとき、最初に必要なのは事実確認です。
「最近多い気がする」
「いつも遅れている印象がある」
という感覚だけで注意すると、本人との認識がズレることがあります。
まずは勤怠記録を確認しましょう。
いつ遅刻したのか。
何分遅れたのか。
早退した日はいつか。
理由の申告はあったのか。
事前連絡だったのか、事後報告だったのか。
同じ曜日や時間帯に集中していないか。
このように、具体的な事実を整理します。
注意指導を行う場合も、
「最近だらしない」
「やる気がない」
ではなく、
「今月は始業時刻に間に合わなかった日が3回あります」
というように、事実をもとに伝えることが大切です。
【本人の事情も確認する】
遅刻や早退が続く場合、本人に事情を確認することも必要です。
もちろん、会社のルールを守ることは大切です。
ただ、背景に何か事情がある場合もあります。
体調不良。
通院。
家族の介護。
子どもの送迎。
交通機関の問題。
メンタル不調。
職場での人間関係。
業務量や勤務時間への負担。
こうした事情があるかもしれません。
本人の事情を聞いたからといって、すべてを認めなければならないわけではありません。
ただ、事情を聞かずに一方的に注意すると、必要な配慮や制度の検討を見落とすことがあります。
まずは、
「遅刻や早退が続いていますが、何か事情はありますか」
と落ち着いて確認しましょう。
そのうえで、会社として対応できること、できないことを整理していくことが大切です。
【勤怠ルールをあいまいにしない】
遅刻や早退への対応で大切なのは、会社のルールが明確になっていることです。
たとえば、
遅刻や早退をする場合、誰に連絡するのか。
電話、メール、チャットのどれで連絡するのか。
いつまでに連絡するのか。
理由をどの程度申告してもらうのか。
勤怠システムにはどう入力するのか。
事後報告が続く場合はどう扱うのか。
このあたりが決まっていないと、対応が人によって変わります。
ある社員には厳しく注意する。
別の社員には何も言わない。
このような状態になると、職場の不公平感につながります。
就業規則や社内ルールに、欠勤、遅刻、早退の届出方法を定めておき、社員に分かるようにしておくことが大切です。
【賃金控除はルールに沿って行う】
遅刻や早退があった場合、働かなかった時間分の賃金を控除することがあります。
いわゆるノーワーク・ノーペイの考え方です。
ただし、控除する場合は、計算方法が就業規則や賃金規程に合っているかを確認する必要があります。
1分単位で控除するのか。
15分単位などにしているのか。
月給者の場合、時間単価をどう計算するのか。
遅刻控除と懲戒としての減給を混同していないか。
ここは注意が必要です。
働かなかった時間分を控除することと、制裁として賃金を減額することは別の話です。
遅刻したからといって、会社の判断で大きく罰金のように引くことはできません。
給与計算で処理する場合は、就業規則や賃金規程に基づいて、説明できる形にしておきましょう。
【注意指導は記録に残す】
遅刻や早退が繰り返される場合は、口頭注意だけで終わらせないことも大切です。
上司としては、
「何度も言っている」
と思っていても、記録がなければ後から確認できません。
本人も、
「一度軽く言われただけです」
「そこまで問題だとは思っていませんでした」
と受け止めていることがあります。
面談を行った場合は、簡単でもよいので記録を残しておきましょう。
面談日。
出席者。
遅刻・早退の状況。
本人の説明。
会社から伝えた内容。
今後の改善事項。
次回確認する時期。
このような内容で十分です。
記録は、本人を追い詰めるためのものではありません。
会社として、事実を確認し、改善の機会を設けたことを残すためのものです。
【改善できる形で伝える】
注意指導をするときは、「遅刻しないでください」だけで終わらせないことが大切です。
本人がどう行動すればよいのかを、具体的に伝えましょう。
始業時刻の5分前には出勤準備を終える。
遅れる可能性がある場合は、始業前に上司へ連絡する。
通院などで早退が必要な場合は、分かった時点で事前に相談する。
勤怠システムへの入力を当日中に行う。
このように、具体的な行動に落とし込むと、本人も改善しやすくなります。
また、事情によっては、勤務時間の変更や有給休暇の利用、短時間勤務、休職など、別の制度を検討した方がよい場合もあります。
注意することと、必要な支援を考えることは、両立できます。
【就業規則と管理職の対応をそろえる】
遅刻や早退の対応は、管理職によって差が出やすい部分です。
ある部署では厳しく注意する。
別の部署では見過ごしている。
社長がいる日は注意されるが、いない日は何も言われない。
このような状態では、社員から見て納得しにくくなります。
就業規則にルールがあるだけでは足りません。
管理職がそのルールを理解し、同じように対応できることが大切です。
特に、注意指導をする場合は、感情的な叱責にならないようにする必要があります。
事実を伝える。
本人の事情を聞く。
改善してほしい行動を伝える。
記録を残す。
この流れを社内でそろえておくと、対応が安定します。
【会社が確認したいチェックポイント】
遅刻・早退への対応について、確認したいポイントを整理します。
始業・終業時刻を正しく記録しているか。
遅刻や早退の回数、時間、理由を確認しているか。
本人の事情を聞く機会を設けているか。
欠勤、遅刻、早退の連絡方法が決まっているか。
就業規則や社内ルールに届出方法を定めているか。
賃金控除の計算方法が明確になっているか。
遅刻控除と懲戒処分を混同していないか。
注意指導の内容を記録に残しているか。
改善してほしい行動を具体的に伝えているか。
管理職によって対応に差が出ていないか。
まずは、勤怠記録を見て、事実を整理するところから始めてみましょう。
感覚ではなく記録で確認することが、落ち着いた対応につながります。
【まとめ:遅刻・早退は小さな違和感のうちに整える】
遅刻や早退は、1回だけで大きな問題になるとは限りません。
ただ、繰り返されると、現場の負担や周囲の不公平感につながります。
だからこそ、早い段階で事実を確認し、本人と話をすることが大切です。
いつ、どのくらい遅刻や早退があるのか。
理由は何か。
会社としてどのようなルールを求めているのか。
本人にどう改善してほしいのか。
必要な配慮や制度の検討はあるのか。
こうしたことを、感情的にならずに整理していきましょう。
勤怠ルールは、社員を縛るためだけのものではありません。
会社が落ち着いて対応するためにも、社員が安心して働くためにも必要なものです。
「遅刻が多いけれど、何となく注意しづらい」
「給与計算でどう控除すればよいか不安」
「管理職によって対応がバラバラ」
という場合は、一度、自社の勤怠ルールと面談記録の残し方を見直してみてはいかがでしょうか。
出典:
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
厚生労働省「労働時間・休日」
厚生労働省「モデル就業規則について」
厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」
e-Gov法令検索「労働基準法」
※本記事は、2026年8月25日時点で公表されている厚生労働省等の情報をもとに作成しています。制度内容や取扱いは変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省等の公的情報をご確認ください。

