在宅勤務やテレワークを取り入れている会社は、以前より珍しくなくなりました。
出社しなくても仕事ができる。
通勤時間を減らせる。
育児や介護と両立しやすい。
遠方の人材にも働いてもらいやすい。
このように、テレワークには多くのメリットがあります。
一方で、ルールがあいまいなまま始めてしまうと、後から困ることもあります。
「勤務時間をどう確認すればいいのか」
「自宅の通信費や電気代は会社が負担するのか」
「仕事中に中抜けした時間はどう扱うのか」
「情報漏えいが心配」
「誰にテレワークを認めるのかで不公平感が出ている」
このような悩みは、実際の現場でもよくあります。
テレワークは、自由な働き方に見えますが、労務管理が不要になるわけではありません。
今回は、テレワークや在宅勤務を行うときに、会社が確認しておきたいルールづくりの基本を社会保険労務士の視点からお伝えします。
【テレワークでも労働時間管理は必要】
テレワークでまず確認したいのが、労働時間の管理です。
自宅で働いていると、会社からは実際の様子が見えにくくなります。
だからといって、労働時間を確認しなくてよいわけではありません。
始業時刻。
終業時刻。
休憩時間。
時間外労働。
休日労働。
これらは、出社勤務と同じように管理が必要です。
たとえば、
チャットで始業・終業を報告する。
勤怠システムに打刻する。
業務開始時と終了時にメールで報告する。
日報で作業時間を確認する。
このように、自社に合った方法を決めておくとよいでしょう。
大切なのは、「家で働いているから本人任せ」にならないことです。
働く場所が自宅になっても、会社が労働時間を把握する必要がある点は変わりません。
【残業や休日労働の扱いを決めておく】
テレワークでは、仕事と私生活の境目があいまいになりやすいです。
少しだけメールを返す。
夜に資料を直す。
休日にチャットを確認する。
このようなことが積み重なると、実際には長時間働いているのに、勤怠記録には残っていないということがあります。
テレワークでも、時間外労働や休日労働をさせる場合には、通常の出社時と同じように36協定や割増賃金の確認が必要です。
そのため、
残業は事前申請にするのか。
緊急時の残業は誰が承認するのか。
休日や深夜の連絡をどう扱うのか。
業務時間外のチャット対応を求めるのか。
こうしたルールを決めておくことが大切です。
特に管理職が夜や休日に連絡を送ると、社員は「すぐ返さなければ」と感じることがあります。
会社として、業務時間外の連絡の扱いを整理しておくと、余計な負担を減らしやすくなります。
【中抜け時間をどう扱うか】
在宅勤務では、途中で私用が入ることがあります。
子どもの送迎。
通院。
宅配便の受け取り。
家族の介護。
役所への用事。
このような中抜けをどう扱うかも、事前に決めておきたいところです。
中抜け時間を休憩として扱うのか。
時間単位の有給休暇を使うのか。
始業・終業時刻をずらして調整するのか。
そもそも中抜けを認めるのか。
ルールがないまま運用すると、人によって対応が変わり、不公平感につながることがあります。
「少しくらいならいいだろう」
「在宅だから自由でいいだろう」
という感覚だけで続けていると、勤怠管理があいまいになります。
柔軟な働き方を認めることと、労働時間を曖昧にすることは別の話です。
社員が使いやすく、会社も管理しやすいルールを整えておきましょう。
【費用負担をあいまいにしない】
テレワークでは、費用負担の問題も出てきます。
たとえば、
パソコン。
スマートフォン。
通信費。
電気代。
机や椅子。
プリンター。
文房具。
こうした費用を、会社が負担するのか、本人が負担するのかを決めておく必要があります。
特に、会社が社員に費用を負担させる場合は注意が必要です。
通常の勤務では発生しない費用をテレワークに限って社員に負担させる場合には、就業規則などで定める必要がある場合があります。
「なんとなく自宅のネットを使ってもらっている」
「電気代は本人負担で当然」
「必要なものは各自で用意してもらう」
という運用を続けていると、後から不満につながることがあります。
金額が大きくなくても、社員から見ると「会社の仕事のための費用をなぜ自分が負担するのか」と感じることがあります。
テレワークを継続するなら、費用負担の考え方を一度整理しておきましょう。
【情報管理のルールを決める】
テレワークでは、会社の情報を社外で扱うことになります。
そのため、情報管理のルールも欠かせません。
会社のパソコンを使うのか。
私物パソコンの使用を認めるのか。
資料を自宅に持ち帰ってよいのか。
紙の書類を印刷してよいのか。
家族が見える場所で仕事をしていないか。
カフェやコワーキングスペースでの作業を認めるのか。
USBメモリの使用を認めるのか。
こうした点を決めておく必要があります。
特に、顧客情報、従業員情報、給与情報、契約書、見積書などを扱う仕事では注意が必要です。
テレワークでは、オフィスと違い、周囲の環境を会社が直接確認できません。
だからこそ、本人任せにせず、情報の持ち出し、保管、廃棄、画面ののぞき見防止などについて、最低限のルールを伝えておくことが大切です。
【対象者や対象業務を決めておく】
テレワークを導入するときは、誰に認めるのかも大切です。
全員が対象なのか。
一部の職種だけなのか。
育児や介護など事情がある人を優先するのか。
一定の勤続期間が必要なのか。
上司の許可制にするのか。
業務の性質によっては、テレワークが難しい仕事もあります。
接客、製造、介護、配送、現場作業など、出社や現場対応が必要な職種もあります。
一方で、事務、経理、営業事務、資料作成、オンライン打合せなど、部分的にテレワークが可能な仕事もあります。
ここをあいまいにすると、
「あの人だけ在宅できてずるい」
「自分の部署は認められないのか」
という不満につながることがあります。
テレワークを認めるかどうかは、本人の希望だけでなく、業務内容、情報管理、連絡体制、評価方法などを含めて考える必要があります。
【評価やコミュニケーションも見直す】
テレワークでは、働いている姿が見えにくくなります。
そのため、評価やコミュニケーションの考え方も見直したいところです。
「会社にいる時間が長い人が頑張っている」
「上司の近くにいる人ほど評価されやすい」
という感覚が残っていると、テレワークをしている社員は不安になります。
一方で、会社側も、
本当に仕事が進んでいるのか。
困っていることはないか。
報告が少なくなっていないか。
チームとの連携はできているか。
という点を確認したくなると思います。
そこで大切なのは、成果や進捗を確認する仕組みです。
定期的な面談。
日報や週報。
オンライン会議。
チャットでの報告ルール。
業務ごとの期限や成果物の確認。
こうした仕組みがあると、在宅でも仕事の状況を把握しやすくなります。
テレワークは、放任ではありません。
適度な確認と、相談しやすい関係づくりが必要です。
【会社が確認したいチェックポイント】
テレワークや在宅勤務について、確認したいポイントを整理します。
テレワークを導入する目的が明確になっているか。
対象業務や対象者を決めているか。
申請や許可の手続きがあるか。
始業・終業時刻の確認方法を決めているか。
休憩時間や中抜け時間の扱いを決めているか。
残業や休日労働の申請ルールがあるか。
通信費や電気代などの費用負担を整理しているか。
会社貸与品と私物利用のルールを決めているか。
情報管理や資料の持ち出しルールがあるか。
自宅の作業環境について確認しているか。
評価や報告の仕組みを整えているか。
就業規則やテレワーク規程に反映しているか。
テレワークは、始めることよりも、続けられるルールを整えることが大切です。
一度運用している会社でも、今の実態に合っているか見直してみるとよいでしょう。
【まとめ:テレワークは自由さとルールの両方が大切】
テレワークは、働き方の選択肢を広げる便利な制度です。
通勤時間を減らしたり、育児や介護と両立しやすくしたり、遠方の人材に働いてもらったりするうえで、大きなメリットがあります。
ただし、自由な働き方だからこそ、ルールが必要です。
労働時間をどう管理するのか。
残業や休日労働をどう扱うのか。
中抜け時間をどう考えるのか。
費用負担をどうするのか。
会社情報をどう守るのか。
誰に、どの業務で認めるのか。
こうした点があいまいなままだと、社員も会社も迷ってしまいます。
テレワークのルールは、社員を細かく縛るためだけのものではありません。
働く場所が変わっても、安心して仕事ができるようにするための土台です。
「在宅勤務をなんとなく認めている」
「費用負担や中抜け時間の扱いが決まっていない」
「テレワーク規程を作らないまま運用している」
という会社は、一度、自社のテレワークルールを確認してみてはいかがでしょうか。
出典:
厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
厚生労働省「テレワーク普及促進関連事業」
厚生労働省「テレワーク総合ポータル 関連資料」
厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」
厚生労働省「モデル就業規則について」
e-Gov法令検索「労働基準法」
※本記事は、2026年8月25日時点で公表されている厚生労働省等の情報をもとに作成しています。制度内容や取扱いは変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省等の公的情報をご確認ください。

