制服、名札、作業靴、備品、研修費。
会社で働くうえで必要なものについて、社員に費用を負担してもらっているケースがあります。
また、退職時に貸与品が返ってこない場合や、備品を壊してしまった場合に、
「給与から引いておけばいいのでは」
と考えることもあるかもしれません。
ただ、給与から何かを差し引くときは注意が必要です。
労働基準法では、賃金は原則として全額を支払う必要があります。
税金や社会保険料のように法令で認められているものを除き、会社が給与から控除するには、一定の手続きや本人の同意が問題になることがあります。
今回は、制服代や備品代、貸与品などの費用負担について、会社が確認しておきたいポイントをお伝えします。
【賃金は全額払いが原則】
給与は、会社が自由に差し引いてよいものではありません。
労働基準法では、賃金は原則として、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うこととされています。
このうち特に大切なのが、全額払いの原則です。
たとえば、
制服代。
作業靴代。
名札代。
社内備品の購入代。
研修費。
貸与品の未返却分。
会社への損害。
こうしたものを、会社の判断だけで給与から差し引くのは注意が必要です。
「本人が使ったものだから」
「会社に迷惑をかけたから」
「みんな引いているから」
という理由だけでは、給与控除が認められるとは限りません。
【給与から控除するには確認が必要】
給与から一部を控除できる場合もあります。
たとえば、所得税や社会保険料など、法令に基づくものは控除されます。
それ以外のものについては、労使協定や本人の同意など、確認すべき点があります。
たとえば、制服代や社内購入品の代金を給与から引く場合、会社と労働者代表との書面による協定が必要になることがあります。
また、労使協定があっても、何でも自由に控除できるわけではありません。
控除する内容が明確であること。
本人に説明していること。
金額が分かること。
就業規則や雇用契約書と整合していること。
こうした点を確認しておく必要があります。
給与から引く前に、「これは本当に控除してよいものか」を一度立ち止まって確認しましょう。
【制服や備品は貸与か購入かを決める】
制服や備品については、最初に扱いを決めておくことが大切です。
会社が貸与するものなのか。
本人が購入するものなのか。
退職時に返却が必要なのか。
破損や紛失した場合はどうするのか。
クリーニング費用は誰が負担するのか。
このあたりがあいまいだと、退職時や給与計算時にトラブルになります。
たとえば、会社としては貸与したつもりでも、本人は支給されたものだと思っていることがあります。
また、返却されなかったからといって、すぐに最終給与から差し引くのは注意が必要です。
貸与品のリストを作り、入社時や退職時に確認できるようにしておくと安心です。
【損害を給与から勝手に引かない】
社員が備品を壊したり、会社に損害を与えたりした場合でも、給与から勝手に差し引くことは慎重に考える必要があります。
たとえば、
会社のスマートフォンを壊した。
制服を返さなかった。
業務用の道具を紛失した。
社用車をこすってしまった。
このような場面で、会社としては費用を請求したいと思うことがあるかもしれません。
ただし、損害の有無、金額、本人の過失の程度、業務上の事情などを確認せずに給与から控除すると、賃金全額払いの原則との関係で問題になる可能性があります。
本人と話し合い、必要な場合は別途請求や合意の形を検討することになります。
感情的に「給与から引く」と決めないことが大切です。
【会社が確認したいチェックポイント】
費用負担や給与控除について、確認したいポイントを整理します。
制服や備品が貸与なのか購入なのか明確になっているか。
入社時に本人へ説明しているか。
退職時の返却ルールがあるか。
貸与品リストを作っているか。
給与から控除する項目を整理しているか。
労使協定が必要な控除について確認しているか。
本人に金額や理由を説明しているか。
損害や紛失を理由に給与から勝手に引いていないか。
就業規則や雇用契約書にルールがあるか。
最終給与からの控除を安易に行っていないか。
費用負担は、金額が小さくても不信感につながりやすい部分です。
最初からルールを明確にしておくことが大切です。
【まとめ:給与から引く前に、ルールと説明を確認する】
制服代や備品代、貸与品の未返却などは、日常的に起こりやすいテーマです。
ただし、給与から差し引く場合には注意が必要です。
賃金は全額払いが原則です。
会社が「これは引いて当然」と考えていても、法的には手続きや説明が必要になることがあります。
大切なのは、最初からルールを明確にすること。
貸与品リストを作ること。
本人に費用負担を説明すること。
給与控除をする場合は、労使協定や本人同意などを確認すること。
退職時に慌てて最終給与から差し引かないこと。
費用負担のルールは、会社と社員の信頼関係にも関わります。
「少額だから大丈夫」
「今までこうしてきたから大丈夫」
で済ませず、自社の給与控除や貸与品の扱いを一度確認してみてはいかがでしょうか。
出典:
厚生労働省「労働基準法第24条(賃金の支払)について」
厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」
厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」
厚生労働省「スタートアップ労働条件 貸付金を賃金と相殺することは可能でしょうか?」
e-Gov法令検索「労働基準法」

