パートや契約社員など、期間を決めて雇用している社員について、
「今回の契約満了で更新しないことにしたい」
という場面があります。
会社としては、
「期間を決めた契約なのだから、満了すれば当然に終了できる」
と考えてしまうこともあるかもしれません。
確かに、有期労働契約は契約期間の満了によって終了するのが原則です。
ただし、何度も契約を更新していたり、これまでの説明から社員が「次も更新される」
と期待することに合理的な理由があったりする場合には、単純に契約期間だけを見て判断できないことがあります。
今回は、有期契約社員を更新せず、契約満了で終了するときに会社が確認しておきたいポイントをお伝えします。
【「契約満了」と「解雇」は同じではありません】
まず整理しておきたいのが、契約期間の途中で会社から契約を終了させる「解雇」と
契約期間が満了したときに次の契約を結ばない「雇止め」は別のものだということです。
たとえば、4月1日から翌年3月31日までの1年間の契約で働いている社員について
3月31日で契約を終了し、4月以降は更新しない場合が雇止めです。
一方、まだ契約期間が残っている12月末で会社から辞めてもらうのであれば、契約期間途中の解雇になります。
有期契約の場合、契約期間の途中での解雇は「やむを得ない事由」が必要とされており
期間の定めのない社員の解雇とはまた違った慎重さが求められます。
まずは、今回の対応が「期間満了による雇止め」なのか、「契約期間途中の解雇」なのかを区別することが大切です。
【契約満了なら必ず終了できるとは限りません】
有期契約は期間満了で終了するのが原則ですが、これまで何度も更新を繰り返している場合などには注意が必要です。
労働契約法では、反復して更新され、雇止めが無期契約社員の解雇と同じように考えられる場合や
社員が契約更新を期待することに合理的な理由がある場合について、一定のルールを定めています。
このような場合、会社が更新を拒否することについて客観的に合理的な理由がなく
社会通念上相当と認められなければ、雇止めが認められないことがあります。
つまり、
「契約書に1年間と書いてあるから問題ない」
とは限りません。
【「次もお願いします」と言っていませんか?】
雇止めを考えるときには、契約書だけではなく、これまで会社がどのような説明をしてきたかも重要です。
たとえば、
「特に問題がなければ来年もお願いします」
「基本的にはずっと更新していく予定です」
といった説明をしていた場合、社員が更新を期待する理由の一つになる可能性があります。
また、契約書には「更新する場合がある」と書かれていても、実際には何年もほぼ自動的に更新しているケースもあります。
反対に、採用時から契約期間や更新の判断基準を明確に説明し、その都度きちんと更新手続きをしている会社では、事情が異なります。
契約書の文言だけを見るのではなく、これまでの更新回数、会社からの説明、実際の更新手続きなどをまとめて確認する必要があります。
【一定の場合には30日前までの予告が必要です】
雇止めについては、厚生労働省の基準により、一定の場合には少なくとも契約期間満了日の30日前までに予告することとされています。
対象となるのは、原則として、
契約を3回以上更新している場合。
または、
雇入れの日から1年を超えて継続勤務している場合です。
ただし、あらかじめ契約を更新しないことが明示されている場合など、取扱いが異なるケースもあります。
実務では、契約終了の直前になって、
「来月で契約は終わりです」
と初めて伝えるのは避けたいところです。
会社として更新しない方針が決まったら、対象となる契約やこれまでの更新状況を確認し、早めに本人へ説明することが大切です。
【更新しない理由も整理しておきましょう】
雇止めをするときには、
「契約期間が終わるから」
だけで済ませず、なぜ今回は更新しないのかを会社として整理しておきましょう。
たとえば、
担当していた業務が終了する。
業務量が減少している。
勤務成績や勤務態度に問題がある。
契約更新時に定めていた判断基準を満たしていない。
など、会社によって事情は異なります。
特に勤務態度や能力を理由に更新しない場合には、それまで本人に何も伝えていなかったのに、契約満了直前になって突然、
「評価が良くないので更新しません」
と伝えると、本人には納得しにくいものです。
問題があれば、その都度説明や注意指導を行い、記録を残しておくことが大切です。
雇止めの場面だけではなく、日頃の労務管理が影響します。
【労働条件通知書の更新欄も確認しましょう】
有期契約社員を採用するときには、契約を更新するかどうかや、更新する場合の判断基準などを労働条件通知書等で明示します。
2024年4月からは、有期契約労働者について、更新上限がある場合にはその内容などについても明示が必要になっています。
「毎年同じ書式を使っているから大丈夫」
と思っていても、実際の運用と書類の内容が合っていないことがあります。
契約を更新するときには、
契約期間。
更新の有無。
更新の判断基準。
更新上限の有無。
実際のこれまでの更新回数。
などを確認しておきましょう。
書面上のルールと実際の運用を合わせておくことが、後のトラブル防止につながります。
【会社が確認したいポイント】
有期契約社員の契約を更新しない場合には、次のような点を確認してみましょう。
今回の終了が契約期間満了による雇止めなのか。
これまで何回契約を更新しているか。
通算でどのくらい勤務しているか。
更新について会社がこれまでどのように説明してきたか。
本人が更新を期待するような言動がなかったか。
労働条件通知書に記載された更新基準と実際の運用が合っているか。
雇止めの理由を説明できる状態になっているか。
必要な場合に30日前までの予告をしているか。
勤務態度などを理由とする場合、これまでの注意指導や面談の記録があるか。
こうした点を事前に整理しておくと、本人への説明もしやすくなります。
【まとめ:雇止めは契約満了日だけで判断しない】
有期契約社員について、
「契約期間が書いてあるから、その日で終了すれば大丈夫」
と考えている会社もあります。
しかし、実際にはこれまでの更新回数や勤務期間、会社からの説明、更新への期待などによって判断が変わることがあります。
特に、長期間にわたって契約更新を繰り返している社員については注意が必要です。
契約を更新するときには更新手続きをきちんと行い、更新しない場合には理由を整理して早めに説明する。
こうした一つひとつの対応が、会社と社員との認識のずれを減らします。
有期契約社員がいる会社では、契約書のひな形だけではなく、これまで実際に
どのような更新をしてきたかも一度確認してみてはいかがでしょうか。
出典:
厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)」
厚生労働省「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」

