勤怠管理をしていると、
「残業時間は15分単位で計算しています」
「30分未満は切り捨てています」
という会社があります。
昔からその方法で給与計算をしていて、特に疑問を持っていないケースもあるかもしれません。
しかし、実際に働いた時間を毎日一定の単位で切り捨てる処理には注意が必要です。
労働時間は、実際に働いた時間を適正に把握することが基本です。
今回は、勤怠の「丸め処理」について、会社が確認しておきたいポイントをお伝えします。
【労働時間は実際の時間を記録するのが基本】
厚生労働省のガイドラインでは、会社は社員の労働日ごとの始業時刻と終業時刻を確認し、記録することとされています。
たとえば、
9時00分始業。
18時07分終業。
という記録がある場合、実際に18時07分まで仕事をしていたのであれば、その時間をもとに労働時間を確認することになります。
「うちは15分単位だから18時00分まで」
と機械的に処理することは適切ではありません。
タイムカードや勤怠システムは、給与計算のためだけではなく、実際の労働時間を確認するための記録でもあります。
【毎日の15分・30分切り捨ては注意】
よくあるのが、次のような運用です。
●18時01分から18時14分までの残業はゼロ
●18時15分になったら15分として計算
●30分未満の残業は一律に切り捨て
●始業前の数分はすべて労働時間に入れない
こうした処理を毎日行うと、実際に働いた時間に対する賃金が支払われないことがあります。
労働基準法では、賃金は全額を支払うことが原則です。
そのため、実際に業務をしていた時間を一律に切り捨てる運用は見直しておきたいところです。
【認められている端数処理もあります】
一方で、労働時間について端数処理が一切できないわけではありません。
厚生労働省では、1か月間の時間外労働、休日労働、深夜労働の合計時間について、1時間未満の端数が出た場合に、一定の端数処理を認めています。
具体的には、
●30分未満を切り捨てる
●30分以上を1時間に切り上げる
という処理です。
大切なのは、「毎日の労働時間」を切り捨てる処理ではなく、「1か月分を合計した後の端数」について認められている処理だという点です。
ここは混同しやすいところです。
「端数処理が認められている」と聞いて、毎日15分単位や30分単位で切り捨ててもよい、という意味ではありません。
【打刻時刻と労働時間は必ず同じ?】
ここで、もう一つ実務上よく問題になるのが、
「タイムカードを押した時間は、全部労働時間なのか」
という点です。
たとえば、終業時刻が18時の会社で、社員が18時20分に打刻していたとしても、18時以降ずっと仕事をしていたとは限りません。
仕事が終わった後に雑談をしていた。
着替えをしていた。
私用で会社に残っていた。
というケースもあります。
一方で、会社から頼まれた片付けや清掃、翌日の準備などをしていたのであれば、労働時間になる可能性があります。
労働時間に当たるかどうかは、単純に打刻時刻だけではなく、会社の指示のもとで業務をしていたかどうかによって判断します。
そのため、打刻と実際の勤務に差がある場合には、その理由を確認できる運用にしておくことが大切です。
【始業前の時間も確認しましょう】
残業だけでなく、始業前の時間にも注意が必要です。
たとえば始業時刻が9時でも、
●8時45分から朝礼をしている
●始業前に制服へ着替えることを義務付けている
●開店準備をさせている
●パソコンを起動してメール確認をさせている
といった場合には、その時間が労働時間に当たる可能性があります。
「給与は9時からだから、それ以前は関係ない」
と考えるのではなく、実際に社員が何をしているのかを確認しましょう。
労働時間に当たるかどうかは、就業規則に何と書いてあるかだけでなく、実際の働き方によって判断されます。
【勤怠システムの設定も一度確認しましょう】
最近は、クラウド型の勤怠システムを利用している会社も増えています。
便利な一方で、導入時に設定した内容をそのまま使い続けていることがあります。
たとえば、
●出勤時刻を15分単位で切り上げる
●退勤時刻を15分単位で切り捨てる
●一定時間未満の残業を自動で削除する
●申請した残業時間だけを給与計算へ反映する
といった設定になっていないか確認してみましょう。
システムが自動計算しているから正しい、とは限りません。
会社としてどのようなルールで勤怠を集計しているのかを把握しておく必要があります。
【残業申請制度があれば安心とは限りません】
「残業は事前申請制にしています」
という会社もあります。
もちろん、残業をする場合に上司の承認を求めるルールを設けること自体は問題ありません。
ただし、申請がなかったからといって、実際に働いた時間までなかったことにはできません。
たとえば、上司が社員が残って仕事をしていることを知っていたにもかかわらず、
「申請していないから残業代は払いません」
という処理をすると問題になることがあります。
残業をさせないのであれば、会社として業務を終了させ、帰宅させる管理も必要です。
申請制度と実際の労働時間の把握は、分けて考えることが大切です。
【会社が確認したいポイント】
勤怠管理について、次のような点を確認してみましょう。
●毎日の労働時間を15分・30分単位で切り捨てていないか
●タイムカードや勤怠システムで始業・終業時刻を確認できるか
●打刻時刻と実際の勤務時間に差がある場合の確認方法があるか
●始業前の準備や清掃などが労働時間になっていないか確認しているか
●残業申請がないことだけを理由に残業時間を削除していないか
●勤怠システムの自動丸め設定を確認しているか
●1か月単位で認められている端数処理と、毎日の切り捨てを混同していないか
勤怠管理は、毎月繰り返す業務です。
少しの時間でも、毎日積み重なると大きな差になることがあります。
給与計算だけを見るのではなく、実際の勤怠記録から確認してみることが大切です。
【まとめ:昔からの勤怠ルールを一度見直してみる】
勤怠の丸め処理は、
「昔から15分単位だった」
「前任者からこの方法で引き継いだ」
という理由で、そのまま続いていることがあります。
しかし、実際に働いた時間を一律に切り捨てる処理は注意が必要です。
特に勤怠システムを利用している場合には、自動設定によって本人も会社も気づかないまま時間が切り捨てられていることがあります。
一度、実際の打刻データと給与計算に使用している時間を見比べてみると、自社の運用が分かりやすくなります。
数分程度だから大丈夫、と考えず、実際の働き方と勤怠記録が合っているか確認してみてはいかがでしょうか。
出典:
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
厚生労働省「確かめよう労働条件 時間外・休日労働と割増賃金」
厚生労働省「確かめよう労働条件 労働時間の適正な把握方法について教えて下さい。」
e-Gov法令検索「労働基準法」

