社員の知識や技術を高めるために、社内研修や勉強会を行っている会社は多いと思います。
新人研修。
商品知識の勉強会。
資格取得のための研修。
終業後の技術練習。
こうした取組みは、人材育成のために大切です。
一方で、よく問題になるのが、
「研修の時間は給与を払う必要があるのか」
という点です。
「勉強だから仕事ではない」
「本人のための研修だから無給」
と考えている場合は注意が必要です。
今回は、研修や勉強会が労働時間になる場合について、会社が確認しておきたいポイントをお伝えします。
【ポイントは「参加が自由かどうか」】
研修や教育訓練が労働時間になるかどうかは、名称だけでは決まりません。
厚生労働省では、業務上義務づけられていない自由参加の研修・教育訓練であれば、原則として労働時間には該当しないとしています。
一方、会社から参加を指示されている場合や、実質的に参加しなければならない場合には、労働時間に該当することがあります。
たとえば、
●参加者を会社が指定している
●欠席すると注意や指導を受ける
●参加後にレポート提出が必要
●参加しないと業務に就けない
●参加が昇格や正社員登用の条件になっている
といった場合です。
「自由参加」と案内していても、実際には断れない雰囲気になっていないか確認してみましょう。
【終業後に行えば無給、ではありません】
研修を終業後に行っている会社もあります。
たとえば、所定労働時間が18時までで、18時30分から社内研修を行うケースです。
会社が参加を指示している研修であれば、終業時刻後であっても労働時間になる可能性があります。
法定労働時間を超えていれば、時間外労働として割増賃金の支払いが必要になる場合もあります。
「通常の仕事は18時で終わっているから、その後は残業ではない」
とは限りません。
研修を勤務時間外に行う場合には、その時間を勤怠上どのように記録するのかまで決めておくことが大切です。
【休日の研修にも注意】
社外セミナーや資格研修を休日に受けてもらうこともあります。
この場合も、会社が参加を命じているのであれば労働時間になる可能性があります。
たとえば、
「日曜日にこの研修へ行ってください」
と会社が指定し、参加後に報告書の提出まで求めているような場合です。
休日に行われるから仕事ではない、ということではありません。
研修日が法定休日なのか、それ以外の休日なのかによって給与計算も変わることがあります。
休日研修を予定するときには、勤務日の扱いを事前に確認しておきましょう。
【本人が自主的に勉強する場合は?】
一方で、社員が自分の希望で勉強する時間まで、すべて会社の労働時間になるわけではありません。
たとえば、
●会社が場所を貸しているだけの自主練習
●本人が希望して先輩に教えてもらう練習
●任意参加で欠席しても不利益のない勉強会
●会社が提供する教材を本人の判断で利用する自己学習
などは、会社の指揮命令下にあるとはいえず、労働時間に該当しない場合があります。
大切なのは、会社が参加や実施を指示しているのかどうかです。
【「自由参加」の運用を曖昧にしない】
実務では、ここが一番難しいところです。
会社としては自由参加のつもりでも、上司から、
「みんな参加するよね」
「やる気がある人なら当然来るよね」
と言われれば、社員は断りにくくなります。
また、参加状況を人事評価に反映している場合も、実質的な強制と受け取られることがあります。
任意参加とするのであれば、
●参加しなくても不利益がない
●欠席理由を求めない
●参加状況を評価に影響させない
●本来の業務とは明確に区別する
といった運用も意識するとよいでしょう。
【新人研修はどう考える?】
入社後に行う新人研修は、通常、会社の業務として実施するものが多いと思います。
仕事の進め方。
社内ルール。
商品やサービスの説明。
安全衛生教育。
このような業務に必要な研修を勤務時間中に会社の指示で受けてもらう場合は、基本的に労働時間として扱います。
「まだ仕事をしていない研修期間だから給与は低くてもよい」
「研修中だから無給」
といった扱いにならないよう注意しましょう。
【研修時間も勤怠に残しておきましょう】
研修が労働時間に当たる場合には、その時間を会社として把握する必要があります。
通常の勤怠システムでは研修時間を記録していない会社もあります。
たとえば、18時に退勤打刻をしてから研修へ参加させていると、勤怠記録上は研修時間が残りません。
そのため、
●研修開始時刻
●研修終了時刻
●参加者
●参加が必須か任意か
を確認できるようにしておくと安心です。
研修の実施方法と勤怠管理をセットで考えましょう。
【会社が確認したいポイント】
研修や勉強会を行っている会社では、次のような点を確認してみましょう。
●参加は本当に自由か
●欠席した社員に不利益がないか
●会社や上司が参加を指示していないか
●研修後にレポート提出などを義務づけていないか
●研修時間を勤怠に記録しているか
●終業後や休日の研修について給与計算を確認しているか
●自主的な学習と会社が命じた研修を区別しているか
人材育成のための研修は、会社にも社員にもメリットがあります。
だからこそ、労働時間の扱いを曖昧にしないことが大切です。
【まとめ:「研修」という名前ではなく実態で判断する】
研修、勉強会、練習、自己学習。
呼び方はいろいろあります。
しかし、労働時間になるかどうかは、その名称ではなく実際の運用によって判断します。
会社が参加を命じているのか。
参加しないという選択肢が本当にあるのか。
業務を行うために必要な研修なのか。
こうした点を確認する必要があります。
「本人の勉強だから無給」
と決める前に、一度、実際の研修の運用を確認してみてはいかがでしょうか。
出典:
厚生労働省「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」
厚生労働省「『研修・教育訓練』に関する労働時間の考え方」
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
e-Gov法令検索「労働基準法」

