社員に出張してもらうことがある会社では、
「出張先までの移動時間は労働時間になるの?」
と迷うことがあります。
朝早い新幹線に乗る。
休日に前泊する。
取引先へ直行する。
遠方からそのまま自宅へ直帰する。
普段の通勤とは違うため、給与や勤怠をどう処理するのか分かりにくいところです。
移動している時間だからといって、すべて労働時間になるわけではありません。
一方で、移動中の過ごし方によっては労働時間になる場合もあります。
今回は、出張や直行直帰の移動時間について、会社が確認しておきたい基本をお伝えします。
【出張の移動時間はすべて労働時間ではありません】
出張先へ向かう新幹線や飛行機の中では、社員は会社のために移動しています。
そのため、
「会社の出張なのだから、移動時間は全部勤務時間では?」
と思うかもしれません。
ただし、移動中に業務をする必要がなく、その時間を自由に利用できる場合には、労働時間に該当しないことがあります。
たとえば、遠方への出張のため、休日に新幹線で移動して前泊する場合でも、移動中に業務を命じられておらず、自由に過ごせるのであれば、移動時間が当然に労働時間になるわけではありません。
【移動中に仕事をさせれば話が変わります】
一方で、同じ新幹線の移動でも、
「移動中に明日の資料を仕上げてください」
と会社が指示している場合は事情が異なります。
社員は移動中も業務をしています。
たとえば、
●パソコンで資料を作成する
●オンライン会議に参加する
●顧客へのメール対応をする
●会社から電話対応を指示されている
●運搬する商品や物品を監視する
といった業務を会社が指示している場合には、その時間が労働時間になる可能性があります。
「新幹線に乗っている時間だから勤務ではない」
とは単純には判断できません。
【車を運転して出張する場合は?】
社用車や自家用車で出張先へ行くこともあります。
社員本人が会社の指示で自動車を運転して移動する場合には、その運転自体が業務となることがあります。
特に、
●会社の車を運転する
●同僚を乗せて出張先へ向かう
●商品や機材を運搬する
●取引先を複数回る
といったケースでは、単なる移動時間とは異なります。
会社として運転を命じているのであれば、労働時間として扱う必要がないか確認しましょう。
【直行直帰の場合はどう考える?】
自宅から取引先や現場へ直接向かい、会社へ寄らないこともあります。
この場合、自宅から最初の勤務場所までの移動が通常の通勤と同じような状態で、移動中に会社から業務を命じられていなければ、労働時間に該当しないことがあります。
同じように、仕事が終わった現場から自宅へ直接帰る時間についても、自由な移動であれば労働時間にならない場合があります。
ただし、
「会社に集合してから社用車で現場へ向かう」
という場合には、その後の移動が業務上必要な移動として労働時間になることがあります。
直行直帰なのか、一度会社に集合するのかによっても状況が変わります。
【所定労働時間内の移動は?】
勤務時間中に取引先から別の取引先へ移動するようなケースもあります。
たとえば、
10時にA社を訪問。
12時に終了。
電車で移動。
14時からB社を訪問。
という働き方です。
このように、業務の途中で会社の指示により必要な移動をしている時間は、一般的には労働時間として扱うことになります。
社員が自由に帰宅したり私用を行ったりする時間とは異なります。
出張の場合には、「移動」という言葉だけで一律に判断せず、その移動がどの場面で行われているのかを見ることが大切です。
【早朝出発や夜遅い帰宅も整理しておきましょう】
出張では、通常の勤務時間よりかなり早く自宅を出たり、夜遅く帰宅したりすることがあります。
たとえば、
「9時の訪問に間に合わせるため、朝6時に家を出た」
という場合です。
早く家を出たというだけで、その時間すべてが労働時間になるとは限りません。
一方で、朝6時から会社の車を運転して商品を運んでいるのであれば、状況は違います。
出発時刻だけで判断するのではなく、移動中に何をしているのかを確認しましょう。
【出張手当と労働時間は別の話です】
出張した社員に、日当や出張手当を支給している会社もあります。
ここで注意したいのが、
「出張手当を払っているから、移動時間の残業代は考えなくてよい」
とは限らないことです。
出張手当は、出張に伴う負担や費用などに対して会社が定める手当です。
一方、労働時間に該当する時間についての賃金や割増賃金は別に考える必要があります。
出張規程がある会社では、出張手当のルールだけでなく、勤怠処理についても確認しておきましょう。
【出張中の勤怠をどう記録する?】
出張では会社に出勤しないため、通常のタイムカードを打刻できないことがあります。
そのため、
「出張の日は一律で9時から18時」
としている会社もあります。
しかし、実際には早朝から業務をしていたり、夜まで仕事をしていたりする場合があります。
出張の日についても、
●業務を開始した時刻
●業務を終了した時刻
●移動中に業務をした時間
●休日に業務を行った時間
などを確認できるようにしておくことが大切です。
勤怠システムの申請機能や出張報告書など、自社で無理なく管理できる方法を決めておきましょう。
【会社が確認したいポイント】
出張や直行直帰がある会社では、次のような点を確認してみましょう。
●移動中に会社から仕事を指示していないか
●社員本人に自動車の運転を命じていないか
●商品や機材の運搬・監視をさせていないか
●所定労働時間内の業務上の移動を正しく扱っているか
●直行直帰のルールが決まっているか
●出張中の始業・終業時刻を把握できるか
●出張手当と労働時間の賃金を混同していないか
●休日の移動と休日の業務を区別しているか
出張は毎日の勤務ではないため、勤怠処理が曖昧になりやすいところです。
社員ごとに処理が違う状態にならないよう、あらかじめ会社のルールを整理しておきましょう。
【まとめ:移動時間は「何をしていたか」で確認する】
出張の移動時間について、
「出張だから全部労働時間」
あるいは、
「移動だから全部労働時間ではない」
と一律に決めることはできません。
移動中に自由に過ごせたのか。
会社から業務を指示されていたのか。
運転や物品の運搬など、それ自体が仕事になっていなかったか。
こうした実態を確認することが大切です。
出張の多い会社では、出張旅費のルールだけではなく、労働時間や勤怠の扱いについても一度整理してみてはいかがでしょうか。
出典:
厚生労働省「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
厚生労働省「問9 移動時間は労働時間に該当するか」
e-Gov法令検索「労働基準法」

