社員を採用するときに、身元保証書を提出してもらっている会社があります。
「昔から入社書類に入っている」
「万が一、社員が会社に損害を与えたときのため」
という理由で続けているケースも多いと思います。
ただし、身元保証書は、一度提出してもらえば退職までずっと有効というものではありません。
身元保証契約については、「身元保証ニ関スル法律」という法律があり、保証期間や会社側の対応についてルールが定められています。
今回は、入社時に身元保証書を提出してもらっている会社が確認しておきたいポイントをお伝えします。
【身元保証書とは?】
身元保証書は、社員が会社に損害を与えた場合などに、身元保証人が一定の責任を負うことを約束する書類です。
採用時に、親族などを身元保証人として提出してもらう会社があります。
ただし、
「保証人がいるから、社員が起こした損害は全部請求できる」
というものではありません。
実際に保証人がどこまで責任を負うかは、会社側の管理状況や本人の仕事の内容、保証契約を結んだ経緯など、さまざまな事情を踏まえて判断されます。
身元保証書があるから何でも保証してもらえる、と考えないことが大切です。
【期間を定めなければ原則3年間】
身元保証契約には有効期間があります。
期間を定めずに身元保証契約を結んだ場合、その効力は原則として契約成立の日から3年間とされています。
そのため、
「入社時に一度提出してもらったので、10年後も有効」
ということにはなりません。
長く勤務している社員について、入社時の身元保証書をそのまま保管していても、すでに契約期間が終了している可能性があります。
まずは、現在使用している身元保証書に保証期間が記載されているか確認してみましょう。
【期間を定めても最長5年です】
身元保証契約で期間を定める場合でも、5年を超えることはできません。
たとえば、
「退職するまで」
「雇用期間中ずっと」
といった形で実質的に5年を超える保証を求めても、そのまま有効になるわけではありません。
一方で、身元保証契約を更新することは可能です。
ただし、更新後の契約期間についても5年を超えることはできません。
会社として継続して身元保証を求めるのであれば、更新時期を管理する必要があります。
【異動や仕事内容の変更で通知が必要になることも】
身元保証について見落とされやすいのが、会社から身元保証人への通知です。
法律では、社員について、身元保証人の責任が生じるおそれのある事情が分かった場合や、任務・勤務地を変更することで保証人の責任が重くなったり、社員を監督しにくくなったりする場合には、会社が遅滞なく保証人へ通知することとされています。
たとえば、
●重要な金銭を扱う仕事へ異動する
●大きな権限を持つ役職へ変更する
●遠方の事業所へ転勤する
●業務上、不適任・不誠実な事情が判明する
といった場合には、身元保証との関係も確認しておく必要があります。
会社側が何も知らせないまま保証人の責任だけを求める、という運用はできません。
【保証人へ何でも請求できるわけではありません】
社員が会社に損害を与えたとき、身元保証人へ全額請求できると思われることがあります。
しかし、身元保証人の責任については、裁判所がさまざまな事情を考慮して判断することとされています。
たとえば、
●会社側の管理や監督に問題がなかったか
●保証人がどのような事情で保証を引き受けたか
●社員の仕事内容や立場が変わっていないか
●会社が損害を防ぐための対策をしていたか
などです。
特に、会社の管理体制に問題があった場合には、保証人へそのまま損害を転嫁できるとは限りません。
身元保証書は、会社の管理責任をなくすための書類ではありません。
【そもそも身元保証書は必要?】
身元保証書を提出してもらうこと自体が、すべての会社に義務付けられているわけではありません。
そのため、
「昔から提出してもらっているから」
という理由だけで続けている場合には、一度その必要性を考えてみてもよいでしょう。
会社によっては、
●機密情報を扱う
●多額の金銭を扱う
●重要な資産を管理する
など、身元保証を求める一定の理由がある場合もあります。
一方で、通常の業務でそこまで必要性が高くない場合もあります。
採用時の書類が増えすぎている会社では、「本当に必要な書類か」という視点で整理することも大切です。
【保証人の変更があった場合も確認】
身元保証人が高齢になったり、死亡したり、本人との関係が変わったりすることもあります。
会社の規程で保証人の変更について届出を求めている場合には、その手続きも確認しておきましょう。
ただし、会社独自のルールを定める場合でも、法律上の身元保証契約の期間や責任範囲を超えることはできません。
就業規則や身元保証書のひな形が古い会社では、内容を一度見直してみるとよいでしょう。
【会社が確認したいポイント】
身元保証書を利用している会社では、次のような点を確認してみましょう。
●身元保証書に保証期間が記載されているか
●期間を定めない契約を長期間有効として扱っていないか
●5年を超える保証期間を設定していないか
●必要に応じて更新時期を管理しているか
●社員の任務や勤務地変更により通知が必要ではないか
●保証人に当然に全額請求できると考えていないか
●現在の業務で本当に身元保証書が必要か
●古いひな形をそのまま使っていないか
身元保証書は、入社時に提出してもらった後、ほとんど確認されないことが多い書類です。
だからこそ、契約期間や現在の運用が合っているかを確認しておきましょう。
【まとめ:身元保証書も定期的な見直しが必要】
身元保証書は、会社にとって安心材料の一つに見えるかもしれません。
しかし、法律上は保証期間に制限があり、身元保証人の責任も無制限ではありません。
入社時に一度提出してもらえば終わり、という書類ではないことを押さえておきましょう。
身元保証書を利用している会社では、
「この保証はいつまで有効なのか」
「現在の仕事内容と契約内容は合っているか」
「そもそも今も必要な書類なのか」
という視点で、入社時の書類を一度確認してみてはいかがでしょうか。
出典:
e-Gov法令検索「身元保証ニ関スル法律」
国立公文書館デジタルアーカイブ「身元保証ニ関スル法律・御署名原本・昭和八年・法律第四二号」

